吉弘 翔の It's show time

“V字スイング”で再びV奪還!?

10月8日(火)付 デイリースポーツ掲載
「ぽるぽるコラム(吉弘翔アナ担当)」より

 

「指導者はフライボール革命を勘違いしないでほしいんですよ」。先月上旬、朝山東洋2軍打撃コーチは苦笑いをしながら答えた。高卒ルーキーたちの現状について話を聞いていた時のことだ。フライボール革命は、近年、メジャーリーガーをはじめ、日本プロ野球界でも実践する打者が多くいる打撃理論の1つ。長打が出やすいとされる打球角度などを数値化し、メジャーリーグのパワー化をさらに加速させた。

 

朝山コーチが説明するフライボール革命の理論。キーワードは「V」だ。「アッパースイングと勘違いしている指導者がいるが全く別物。フライボール革命は、構えた位置からおへそのあたりまで脇が閉まって出てきてそこから振り上げる。Vの字を描くんです」。さながら私に打撃指導をするように、身ぶり手ぶりを交えながら詳細に説明してくれた。

 

正しく理解すれば多数のメリットがあるフライボール革命。ただ、高卒ルーキーたちは誤った理論を身に着けてしまっていると朝山コーチは嘆く。高校通算49HRの大砲候補・林晃汰、同46HRの中神拓都。2選手とも「バットが下から出ているだけ。高校から入ってきた選手の大半がこの打ち方なんですよ」と、染みついた悪癖のしつこさに頭を抱えていた。今季2人の2軍でのHR数は、林7本、中神1本。周囲をうならせるほどの数字を残すことはできなかった。

 

朝山コーチは“フライボール革命”の間違いに加え、“金属バットの性能”についても言及した。「バットが良いから多少打ち方が悪くても飛んじゃうんです」。偶然にも、高校野球連盟から金属バットの性能見直しが発表されたのは数日後のことだった。

 

育成を重視するカープにとって、誤った革命の広がりは死活問題になりうる。「ただのアッパースイングではプロの150kmを超えるボールは打てない。ポイントは“V”です」。最後に念を押してロッカーに引き上げた朝山コーチ。若鯉がV字スイングを手に入れれば、カープ再びのVロードも見えてくるかもしれない。V字スイング普及活動は今後も続くだろう。