海外奉仕協会のオーストリア平和奉仕者 ベネディクト・シュルツ氏

 

(平成30年8月24日に行われた「講演会とビアホールの会」講演の一部を紹介)
講演の抜粋
 
最初に自分自身を簡単に紹介します。ウイーンの高校で、グラフィック デザインを勉強して、卒業後ウイーン大学の日本学専攻の学生になりました。
 
日本で好きなものといえばお好み焼き、そして海です。オーストリアには海がありません。一番近い海はイタリアかクロアチアですが、住んでいるところからは、8時間以上かかります。広島では、仕事が終わったら、自転車に乗って、元宇品まで行って夕日を見ることが出来ます。とてもいい感じです。
 
日本に来てから一番びっくりしたことは、クリスマスの習慣です。オーストリアでは、クリスマスの別の名前は『静かな祭り』で、基本的には家でクッキーを焼いて楽しんだりして、静かに家族と共に過ごします。東京のライト イルミネーションはすごくきれいと思うのですが…。
 
もう一つの違いは大晦日。オーストリアでは、大晦日の夜は、すごくうるさいのです。友達とお酒を飲んだりしてパーティーをして楽しみます、花火は街中ではうるさいぐらいです。オーストリアのクリスマスは、日本の大晦日のように見えて、日本のクリスマスはオーストリアの大晦日のように見えるのは面白いと思いました。
 
さて、オーストリアでは18歳になった男性は兵役か非軍事役務をしなくてはなりません。私は兵役をしたくなかったので、外国での平和活動ということで、日本で、ボランティア活動をすることにしました。去年の9月1日に始まったボランティア活動の中で、私はオーストリア人に、原子爆弾による悲惨な状況を教えてあげたいと思うようになりました。そのために、プロジェクトを作りました。
 
プロジェクトは、平和記念公園の三次元モデルを作ることでした。私は、多くの世界中の人々が広島に行くことができなくて、平和記念公園に来ることができない人がたくさんいると思いました。そこで、私の趣味はビデオゲームを作ることでしたから、そんなスキルを使って、パソコンで、平和公園の案内を作ることにしました。簡単なプログラミングをして、今ではパソコン内で原爆ドームやレストハウスを訪れて、パソコン内で録音の説明を聞くことができるようにしました。
 
原爆による悲惨な状況は、本で活字を読めば大変であることがわかるのですけれど、劇画の「はだしのゲン」を見た時、今まで以上に私はショックを受けました。絵本は悲惨な状況を知る上で大変重要だと思うようになりました。しかし、画は動きがないので、現実の悲惨さは完全には伝わりません。だから、動画や映画は絵本よりさらにいいと思いました。
 
しかし、映画を見たといっても、見ている人は『あー、そうですか。大変ですね』で終わってしまいます。大変だという思いはあるのですけど、現実には原爆の悲惨さは、伝わりにくいと思いました。一番わかりやすい方法はインタラクティブ、相互作用だと思います。映画のように映像をただ見るだけではなく、自分でその世界に入って行動を起こさせるのです。自分がしたいことを自分で決めるので、自分の行動によって人が死んだら、それは本当に大変なことだという事を知ります。
 
私の仕事のメイン プロジェクトは『W a r P e a c e S t o r y 』という、一見、ビデオゲームのように見えるのですけれども、私の平和への思いを動く絵本にしたので、ゲームではありません。私の制作したビデオストーリーでは、原子爆弾爆発の瞬間を自分自身の行動によって体験し、原爆の恐ろしさをあなた自身に説明します。
 
私は、「はだしのゲン」に巡り合って奮い立たされたことが、このビデオソフト制作につながりました。これが私の広島に来てからの1年間のプロジェクトです。まもなく完成します。オーストリアに帰ってからは、このビデオソフトを使って、原爆の恐ろしさ、悲惨さをオーストリアの人々に伝えていきたいと思います。また、広島の平和記念資料館でもこのビデオソフトが近々見ることができることを願っています。

海外奉仕協会のオーストリア平和奉仕者 ベネディクト・シュルツ氏

(プロフィール)
オーストリア・1996年生まれの21才。グラフィックデザイナーの職業教育を受けたあと、ウイーン大学で約1年間日本語を勉強。一方で海外奉仕者として活躍。2017年1月からオーストリア平和奉仕の部長。昨年9月から広島平和文化センターで勤務。一年間、広島平和文化センター・平和記念資料館でボランティア活動。合気道をたしなみ、はだしのゲンの愛読者でもある。

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