放送番組審議会

第491回

開催日:2019年10月15日(火)
場 所:広島ホームテレビ特別会議室
【課題番組】
テレメンタリー2019
「私は何者なのか ~名前も奪われた原爆孤児~」
番組について

4歳のとき被爆し、家族を失った。同時に本当の名前を知る人もいなくなった。
育ったのは「広島戦災児育成所」。田中正夫という名前は、育成所でつけられたとみられる。

「田中正夫」さん(78)自分が何者なのか―

“本当の自分”を知りたい、家族に会いたい、その思いは今も変わらない。
田中さんはあらためて自分のルーツを捜し始めている。
過酷な生活や差別が理由で、語られることの少ない原爆孤児の実態。
当時の記録や証言、田中さんの行動から、今もなお苦悩する原爆孤児の姿を伝える。

 

出席委員

前川功一委員長、小川富之副委員長、大井美恵子委員、河合直人委員、藤本慎介委員、前田昭委員、見延典子委員、山平慎一郎委員

 

合評での意見
  • 原爆に関する報道はずいぶん見てきたが、耳が不自由で「原爆孤児」という切り口は、なかなかなかったので良かった。内容も、ルーツを探るところに集約しながら、周りの人たちを描いており、30分だが、とても見ごたえのある内容だった。
  • ルーツを探すうえで、70年余りたち、資料や知っている人がだんだんなくなってくる…原爆の被害を間接的に知らせることができた、と思う。
  • 原爆は、一瞬にして、広範囲に被害を及ぼす特殊性がある。通常兵器だと、被害が限定的で、何らかのつながりがある人がいて、ルーツがたどれると思う。番組で取り上げた問題は発生しない…。そういう意味で目の付け所がよかった。
  • 主人公が手話で話すシーンがあったが、あえて余計な音楽がかかっていないことで、主人公の状況もよく理解できた。
  • 残念なのは、田中正夫さんと、なぜ名付けられたのか、言及すべきだった。
  • 自分が何者なんか、はっきりしないままで終わっているので、後味が悪いが、ゴツゴツしている感じが好感持てる。今後も取材を継続してもらって、みつかれば一番いいが、ハッピーエンドでなくても、自分がなにものか、苦しみ続けている姿を伝えるのもジャーナリズムと思う。
  • ナレーションは、女優の有村架純さんを採用していたが、番組にあった声のトーンがよく、番組の質を上げていた。
  • 原爆資料館は、今年リニューアルして、原爆孤児のコーナーもできている。映像が流れているところは、多くの海外の人が足をとめているので、英語バージョンをぜひ作ってほしい。