放送番組審議会

第515回

開催日:2022年4月19日(火)
【課題】
ドキュメント広島スペシャル
「#つぶやき市長と議会のオキテ ~そこに“議論”はあるか」(2022/3/27放送)
出席委員(敬称略):

前川功一、小川富之、大井美恵子、東山浩幸、見延典子、河合直人、藤本慎介、石井暖子

 

合評での意見

【総合批評】

  • 議会の役割やそのあり方、議会と首長の二元代表制が機能しているかどうかを問うており、一連の出来事を追っているのは、ドキュメンタリー番組にふさわしい。
  • この番組の意義は、議会で議論して政策を決めていくのではなく、見えないところで「根回し」で決まる実態を映像で捉えたことにある。
  • 是々非々や根回しというような着眼点をきちんと付けて、それに対する両者の言い分なども取り上げていたので、最後まで飽きずに見ることができた。
  • 市長が改革を訴えて、Twitterを駆使して市政の透明化を図っていく姿と中山間地域の地方議会、市長と議会の溝、Twitterと昔ながらの根回しを上手く対比させながら対立している構図を表現していくことで、地方の政治改革の難しさを視聴者自身に考えてもらう内容。
  • 市長のTwitterが問題なのか、それがきっかけなのか、議論できていないことが問題なのかが分かりにくかった。
  • この騒動によって影響を受けているのは、やはり市民だろう。市民がこの状況をどう捉えているのか。もう少しフォーカスしてもよかった。(同意見、ほか1件)

【批評ポイント】
「地方議会の議論」について、安芸高田市だけの問題ではなく、全国の自治体にも共通する課題を感じ取れたか。

  • 旧態依然とした議会の在り方がずっと表現されており、市議選では市長に共感した若手候補が当選するものの、市長の反対派も選挙でみそぎをして市民に選ばれたというところは、どこにでもある自治体の縮図が描かれていた。
  • 市長が、「議会での一般質問のやり方が有効な質疑応答になっていない」と指摘していて、市民からも「もう少し高いレベルで」という声が上がっていたところは、全国共通の課題なのだろう。全国においても政治への関心を高める必要があることを上手く訴えていた。
  • 全国的に共通する課題だと示したいのであれば、ほかの自治体での同様の事例に少し触れる手もあったのでは。
  • 安芸高田市議会の問題を全国に共通すると言うと、反対意見も沢山出てくると思います。汚職買収事件のあった自治体は特殊とも言えるので、共通と言い切るのは問題があるのでは。

事実を積み上げることで、市長と議会のどちらかに極端に偏ることのないよう意識したが、どのように受け止めたか。

  • 両者の意見を順当に扱っていたと感じた。
  • 市長にも、議員にも切り込む質問をしており、偏らないよう意識しているように感じた。ただ、「根回し」や旧来型のやり方をしてきた議員たちにも、もっと言いたいことがあるように感じた。そうした議員たちの思いや、これまでの経験のわかる部分がもう少しあれば、この問題をより深く考えられただろう。
  • 中立な立場で描くというが、どんなものについても大体偏っているもの。議長・議会と市長という二つの視点ではなく、そもそも広島ホームテレビという三つ目の視点があって、三つ巴の番組構成になっている。広島ホームテレビはどちらかというと立場上、市長さんに近いのではないか。いいか悪いかは分からないが、メディアはそういうもの。
  • 全体感でいえば市長に偏っていた印象。市長の「持ちつ持たれつでは、意識せずになれ合うこととなり、大規模買収事件にもつながった」というコメントにつなげていくような構成。
  • 新しいことにチャレンジしようとしている市長と、従来の慣習に従って、自分たちの状況を守ろうとしている議員の人たち。そもそもそういう構図なので、それははっきり打ち出していい。事実を切り取っている場面で随所にそういうところが出てきていて、偏った取材はしていないが、その辺が端的に表れていた。
  • 記者に対して友好的に接している市長と、不信感を持って接している議員とは、映像もコメント内容も、やはり番組が市長寄りになってしまうのは仕方のない部分だろう。
  • 議長が市長議長会議への出席を拒むあたりから、「反対すること自体が目的になってしまったような反対派」、対して「市民のことを考える市長」という図式が明確になり中立性が少し失われた。注意しなければいけないのは、結果的にそう取られるのは仕方ないとしても、双方の言い分をきちんと聞いた上で報道することが中立を表現するために必要。

【批評を受けた制作側の説明】

  • 市長の応援番組にならないように、どちらにも自分が深入りしないよう、あくまでも中立的な目線を持って取材した。取材に対する公平性を表現はできたと思っている。
  • 編集は、議会側は少しおかしな部分が目立ってしまうが、最後の場面で「これが市民のためになっている政策なのか?」と市長にも厳しい質問をすることで、どちらにも肩入れせず、これを視聴者の方がどう捉えるかといった番組にした。
  • 市長だけではなく議会の中、どういった政治・議論の過程で決まっていくのかというところまでスポットを当てて取材できたのはよかった。
  • 全国各地の自治体、もしかしたら国会も含めて、こういった議論の進み具合の遅さや仕組みも色々きしみが出てきている。そういった問題や、最後はやはり人間の感情ということなど、色々と今回の取材から得られたので、また幅を広げて政治の問題を取材していきたい。

以上