放送番組審議会

第530回

開催日:2023年10月20日(金)
【課題】
踏まれても 踏まれても~ゲンと子どもたちの半世紀~ (2023/8/19放送)
出席委員(敬称略):

小川富之、河合直人、井筒智彦、大井美恵子、喜多村祐輔、木村文子、武井三聡子、東山浩幸

 

合評での意見

【総合批評】

  • 世界で地政学リスクが高まっている中で、このように戦争がもたらす悲劇を地道に伝えていく大切さについて、この番組を通じて考えさせられた。
  • 三世代を取り上げていて、世代間での考え方の違いがあるのだということをよく知ることができた。
  • 感覚的にだが、何を伝えたかったのか、少しぼんやりした印象を受けた。もっとこうあるべきではないか、こう変わるべきではないかといった新しい視点や考え方、行動を促すような強い印象はそこまで感じなかった。
  • 他の地域での取り扱いがどうなっているのかが気になった。それがあると、より「ゲン」の現在地やこれからの平和教育のあり方が伝わりやすくなるのではないか。
  • 「はだしのゲン」1巻を怖くて読めなかったという被爆者のお孫さんが、平和学習をきっかけに少しずつ読み進めているというのは、平和ノートでなじみが出てきて「はだしのゲン」が読まれやすくなったといった意味なのか、それとも教材が改訂されたので、教材とは関係なしで「はだしのゲン」が読まれるようになったという意味なのか、意図がよく分からなかった。
  • もし、「ゲン」が教材からなくなったというところにウエートを置いているのだとしたら、「ゲン」を採用する時にどういう思いがあって採用したのかというのを、ぜひ出してもらいたかった。

【批評ポイント】
1. 中沢さんが「ゲン」を通して伝えたい思い、今も夫の思いを伝え続ける妻・ミサヨさんの思いは伝わりましたか

  • 被爆者の実体験の声がゲンだということと、核兵器や戦争の恐ろしさ、だから戦争を起こしてはいけないといった思いが全体を通して強く伝わってきた。
  • 妻ミサヨさんだけではなく、ボランティアの方に支えられて、中沢啓治さんはずっとみんなの中で生きていらっしゃるのだと感じた。
  • 非常に貴重な資料から、中沢さんの怒りとか復讐するといった強い思いまで伝わってきて良かった。ミサヨさんも直接体験していない引け目のようなものがありながらも、これは伝えなければいけないという思いもあったというのは分かりやすかった。

2. 時代背景が変わりつつある中、平和学習やゲンについて伝え方の変化は感じましたか

  • 原爆の本当の怖さにふたをすること自体がいいのかという面も考えなければならない。教育委員会に対し、そこにふたをしていないですかと聞くことを含めて、切り口としては作品にしづらい部分を取材していたので凄く伝わってくるものがあった。
  • サブタイトルの「ゲンと子どもたちの半世紀」を考えた場合、もう少し教育現場の「ゲン」と、「ゲン」に影響を受けた人たちの声があればと感じた。「ゲン」によって原爆の悲惨さとか平和の大切さを知ったという人の子ども時代のエピソードといったものがあると、より深みが出たのではないか。
  • 現代の現役の教員たちがどのような考えを持っているのか、今回教材から「ゲン」が消えたことについてどう考えているのかということが匿名でもあるとより良かった。
  • 授業が3時間しかないとか、松江で閲覧制限になったということは触れられていたが、それがどういう変化からそうなったのかはよく分からなかった。

以上