第536回
開催日:2024年5月28日(火)
【課題】
「きょうも0人~芸備線 無人駅の守りびと~」
「きょうも0人~芸備線 無人駅の守りびと~」
(2024/4/20放送)
出席委員(敬称略):
小川富之、河合直人、井筒智彦、稲田信司、大井美恵子、喜多村祐輔、木村文子、東山浩幸
合評での意見
【総合批評】
- 一緒に考えていくべき問題だというふうに認識できるようないい番組だった。
- 一番良かったと思ったのは、この路線を残す、残さないといったどちらかの結論ありきにしていないところ。目の前にある事実をしっかりと伝えて、視聴者側が判断をしたり考えを膨らませたりさせる番組。
- まず人に焦点を当てて、この問題の是非という二項対立にならない形でリアルを伝えようという制作意図がとても伝わってきた。これはテレビのドキュメンタリーだけではなく、新聞でものを書く際にも極めて参考になるアプローチで感動した。
- 林さんご夫妻を選択されたという点が、一見暗くなりがちなテーマでありながら、トーンそのものは決して暗くない、何か先にあるのではないかと思わせる明るさを持っているところが素晴らしい。
- すごく考えさせられる番組。まず住民の思いもJRの経営の状態も分かるし、どちらの痛い思いも分かる。それは生の声をリアルに出されていたことで、そのように感じられたのだと思う。
- 投げかけたものの先に、その課題解決のヒントは何があるんだという一種の答え探しをしていくようになればいい。より広い視点の番組制作や討論の場など、いわゆる政策という枠から離れてフォーラム的なものを広島でやっていくといった形で、この番組を通して投げかけたものが広がり、少し思考停止に陥りがちな中央や個別企業の人たち、あるいはステークホルダーを刺激するようなものになればいい。
【批評ポイント】
1.JR芸備線の現状・リアルは伝わりましたか?
- 林ご夫妻の話や備後西城駅の岡崎さんの話があり、地元の方の声がより伝わってくる内容だった。
- 駅中心の番組ではあったが、地元の全体像、雰囲気をもう少し説明してもらってもよかった。少し検索してみると小奴可小学校というのもありましたので、あの周辺の様子がもう少し分かるとよかった。
- JR芸備線の利用者数などの数字が明確に出ていなかった。比較もなかったため、そこは足りていなかった。
2.JR小奴可駅できっぷを販売する林さん夫婦が感じている「廃線=町が社会から忘れられてしまう」という思いは伝わりましたか?
- 林さんの夫が言われていた「JRさんの目指すところは何なのか、目的は何か」というところは、この問題の根源をすごく突いていた。
- 私は伝わらなかったというか、そもそもこれを伝えようとしていたのかなと思った。たぶん根っこにはあると思うが、千鶴さんの「田舎に住んでいるのは田舎を残したいから。自分たちは都会に住めないから」という言葉から、忘れられる懸念よりも、まず自分たちはここが好きだし、ここに住みたいという思いは伝わった。
- 唯一の公共のライフラインがなくなると、どんどん過疎化が加速して年老いていく町になってしまうのではないかということは、お二人の話を聞いていて非常にそう思った。大阪から帰省されているご子息を持つお母さんの「それ(廃線)だけはやめてほしい」という心のこもった一文に住民の思いがすごく反映されていた。
- 林さんご夫妻が寂しさをおぼえているとか、過疎化してはいけないと思っていることは分かったが、社会とのつながりという点は全然番組の中では出てこなかったし、そこは意識されていないのではないか。
3. ローカル鉄道の存廃問題に関心は持ってもらえましたか?
- 本当に関心が沸いた。顔を思い浮かべられる人がいるというのがひと事ではなくなる大事な要素だと思うので、あの二人がいるんだったらいつか会いに行きたいなという気持ちにもなるし、一人の小さな人間として何かできることはないかなと思った。継続して取り上げてほしい。
- 入り口ではないかというふうに受け止めている。ただ廃線という問題を単に暗いトーンではなく、ではどうすればいいのかという投げかけをこれからの3年間で繰り返していくことにより、その関心を維持し高めていくというのがメディアの仕事でもあると思う。
- これをきっかけに全国でローカル鉄道の存廃問題が起きているというところにまで自分の関心を向けられたかと言われると、まだまだ足りないかもしれないと思った。
- 鉄道ファン、学生さんとかはどのように感じられたのか、その声を聞いてみたいと思った。
以上