第539回
開催日:2024年9月10日(火)
【課題】
ドキュメント広島緊急特番 1min. 安芸高田 ~つぶやき市政と市民のホンネ~
ドキュメント広島緊急特番 1min. 安芸高田 ~つぶやき市政と市民のホンネ~
(2024/7/14放送)
出席委員(敬称略):
小川富之、大井美恵子、井筒智彦、稲田信司、奥田亜利沙、喜多村祐輔、木村文子、東山浩幸
合評での意見
【全体】
- 1分間ノーカットで本音というのはすごく面白い。ぜひ安芸高田市以外でもやってほしい。『ピタニュー』で「市民のホンネ」のようなコーナーがあってもいい。
- なかなかやったことがない手法に挑戦して番組づくりをしている。姿勢そのものは非常に真摯だなと受け止めた。
- 番組のコンセプトや発想はすごく面白い。なぜなら、広島県内でほかの町のことが分かるということがなかなかない。こういう番組は今後も作ってほしい。
- インタビューを受けた人が若年なのか高齢なのか、職業は何なのかという属性によって、それぞれが望んでいる石丸市政なり市政一般に対する政策の優先順位が異なるのかどうか、そのあたりがなかなかくみ取ることができなかった。
- 市民のサンプリングが適切だったのだろうか。シンプルに男性が多い、若者が少ない、あとは議会関係者が多い。この議会関係者は、その多さが男性意見の多さを際立たせ、市民の声が聞きたいのに割としゃべらせすぎているような感じ。
- 気になったのは、この取材が行われた時期。安芸高田市長選に合わせて取材するのは、客観的に静かに市民が語ることができるタイミングだったのだろうか。
- 「ホンネ」の部分が、本当に本音を引き出せていたのか。どれぐらい考える時間があったのだろうかということが気になった。自分の意見を1分間言葉に出すというのは大変だと思うが、本当に言いたいことを言語化できていたのか、みんなどれぐらい考える時間があったのか。
- もしかしたら顔を伏せた状態のほうが、より本音に近いものを引き出せたのではないか。顔を伏せて話している方のほうが本心を言っているのではないかと思いながら聞いた。
- 主観的なものと客観的なもののバランスで、今回は主観的な意見の比重をあえて重くした内容だったと思うが、評価の判断材料になる客観的な事実の部分がもう少しあっても良かった。
- 石丸市政を劇薬として捉えると、安芸高田市の地域社会にとって彼は分断をもたらしたのか、それとも再生に対するヒントを与えたのか、本当はどちらなのかと知りたくなると思う。そこが道半ばの段階で、意見がいろいろあるが皆さんはどう考えますか、と視聴者が少し放り出されたような印象を受けた。もう少し伏線回収があったほうが、地域社会の再生や少子化問題など地方政治の今後に期待する視聴者の関心を呼ぶことができたのではないか。
【批評ポイント】
1. 「安芸高田市民は石丸市政をどう評価しているのか?」という部分に焦点を当てて番組を構成した。賛否を含めたリアルな市民の声が伝わる内容になっていたか?
- 賛成の声も批判の声も両方あったので分かりやすかった。誰かが解説するより、市民一人一人の声が生で聞けたのは良かった。
- 若い方の意見がもっと聞き出せたら良かった。若い方に聞いて答えられない姿も含めて、もっと見たかった。「将来をどう考えていますか」という質問もあり、将来をリアルに考えていかなければいけない若者がどのように捉えているのか聞きたかった。
- リアルとは、そのまま伝えることがリアルなのでしょうかという疑問がどんどん湧いてくる。垂れ流しは別にリアルだとも言い切れない。既に選んだ段階で編集が働いているわけだと思う。だから、そこを強調するがあまり、リアルから逆に離れていってしまっている可能性すら感じてしまった。
- 市民の人は、本音がポロッと垣間見えるいいシーンがいくつかあったが、一方で役職を持っている方々の1分というのは、かなり建前を述べている印象。全体で見ると、本音の部分と建前の部分では、建前のほうが多いのではないか。それを見せられる我々は、これによって本音をどうやって導き出していけばいいのかと考えさせられてしまった。
- 途中から選挙候補者なり候補者の応援者、議員も含めて役職や立場のある方が続く。そうなってくると、やはり選挙に出ている方であれば自分の公約に合わせた感想めいたことしか言わないし、「いいところを引き継ぎます」とかいう抽象的で当たり障りのない感想めいたものが1分間続く。それは本音とかリアルという部分、一視聴者として期待したものが薄れていっているような印象を受けた。
- 「対話が必要です」や「議会と対立して硬直した」という意見はネットでもよく見る意見。コンセプトとして、ネットの陰に隠れるネットでは見えない意見を聞けるという形という制作意図があるのであれば、市民は具体的にどういう体験をしたから対話が必要だという感想に至ったのか、そのプロセスをインタビューで知れたら良かった。
- 議員も市民といってよいのか、「市民のホンネ」というくくりに入っているのが気になった。立場と状況でまったく意見が変わっているものもあったし、議会の方が対立の問題を取り上げられていると言われていて、そういった話は市民の本音とギャップが大きすぎる。
- 「市民のホンネ」にテーマを置くのであれば、インタビューだけではなく、例えばアンケートの結果と比較検討ができると、より市民の本音がメディアを通して伝わるのではないか。
2. 市民のインタビューを1分間ノーカットで放送し、編集の入らないありのままの声を放送する手法をとった。この手法に対してのご意見やご感想は?
- 視聴者としては何らかの意図的な編集をされることもあるのかなと感じる中で、ノーカットと言われると、話し手そのままの声が届けられているのだと安心感を持って番組を見ることができる。その点ではこの手法は良かった。
- 時間を切られて話すというのは話す人にとってはハードルが高くなったと思うので、ありのままを伝えることはすごくいいと思うが、時間制限を作ったことに対してはどうだったのだろうか。
- 見せ方としては、もう少しテロップを入れたほうが良かったのではないか。いきなり「話してください」と言われると、市民も端的に理路整然に話すことは難しいのでダラッとしてしまうところもあり、聞いていても要点がつかみにくい。何か文字情報があったほうが分かりやすい。
- インタビューの時間のかけ方、あるいはサンプルの抽出の仕方、答える人・答えない人、自分たちは何人に問いを発して何人が拒否をして何人が答えたのか、そういった基本的なデータ、真実性を視聴者に伝えるような何かまとまったデータを最後に紹介すればより良かった。
以上