第540回
開催日:2024年10月22日(火)
【課題】
92歳 私の仕事 ~被爆者 サーロー節子~
92歳 私の仕事 ~被爆者 サーロー節子~
(2024/8/6放送)
出席委員(敬称略):
小川富之、大井美恵子、井筒智彦、稲田信司、奥田亜利沙、喜多村祐輔、木村文子、東山浩幸
合評での意見
【総合批評】
- サーローさんはカナダに身を置いていて世界に被爆の実相を発信し続けているという存在、そういった被爆者の方に密着したという点がとても貴重
- サーローさんの言葉から、今も続けられている活動や仕事の意味がジーンと伝わってきたような気がする
- 92歳になっても自分が動くことで社会を変えるんだ、変革するんだという熱い思いを持たれているのは非常に尊い。それが伝わるいい番組
- 情感の共有ができないという海外での孤独を乗り越えるために行動に移すことは、サーローさんならではということが伝わってきた。私どもが報道する際にも、こういった形で彼女が抱えている内面の孤独に果たして迫ることができたであろうかと、自らへの問いかけをした。そのくらい、その言葉を引き出したのは大事だった
- 被爆80年に向けての活動や、カナダの首相への手紙などは、語り手が少なくなっている現状から今後を見据えたものとして、広島出身者として今後のことをきちんと考えていかなければいけないというメッセージも持っていたのではないか
- 心に残ったのは「おざなりな言葉だと人は動かないよ」という言葉。「平和」「核兵器をなくしましょう」という言葉はよく聞くが、各国の首相に手紙を送った、カナダに平和の灯を移した、公園を作ったと、立て続けにサーローさんの活動が出てくると、活動していく中で実績を積まれて、それが今このような結果につながっているというのを映像で見られて大変勉強になった
- 番組を見ていてG7にサーローさんが呼ばれなかった理由を考えた。煙たがられていたから呼ばれなかったのか、説得力があるから呼ばれなかったのか。G7は大変な失敗だった、残念だったという言葉の意味が分かった気がする
- 番組の焦点が少しぼやけてしまった。G7での政治的な話が出た。平和の番組をやると必ず政治が入ってくる。そうすると、本来考えるべきなのは平和についてなのに、どうしても見ている側は政治の色を感じてしまう
- もし、番組にまったく政治の話がなかったらどうだったかということにも通じるが、徹底的に人の部分にフォーカスした内容もありだったのではないか。サーローさんの人間臭い部分が立ち上がれば立ち上がるほど、言葉の浸透力も、また今までと違った形で強くなるのではないか
- ICANがノーベル平和賞を受賞して、ものすごく喜びに満ちて力強い言葉で語っているサーローさんの絶頂期と、広島サミットの後の怒りのサーローさんとのギャップを生んだのは何なのか。サーローさんの一種特異な被爆者としての有様、孤独を乗り越える行動力、そういうところに焦点を置きつつ、ギャップを埋める、あるいはそのギャップがあることをうまく説明すれば、さらに深い番組になるのではないか
- 広島ビジョンがそもそも何なのかをテロップで説明するなど、それがうまく伝われば、なぜ、このおばあちゃんがこんなに怒っているのかが伝わったのだろう
- 広島ビジョンのどこが問題かというと、要するに核抑止力という形で認めて、核を保有するということを肯定してしまっていることにがっかりしたということ。番組内の説明では、たぶん普段から意識してない人には分からないと思う。少しだけでもいいから、この広島ビジョンの岸田さんのどういうところにがっかりしたのかを出してもらえるとありがたかった
【批評ポイント】
1. サーローさんの半世紀以上にわたる反核活動の「動機」や「背景」が十分に伝わったか
- 十分伝わった。特にG7広島サミットは「大変な失敗だった」という発言の真意が、この番組を見てわかった
- 現地に取材に行くからこそ、本当の活動を見てこそ伝わってくるものがある。すごく伝わる内容だった
- 被爆して生き残ったことを伝えていかなければいけないということは繰り返し伝わった。突然現れた横断幕、これが何なんだと思ったところで、亡くなられた同級生のお名前一人一人、この方は本当に優秀だったと思い出しながら活動されている。サーローさんを動かしているのは、この横断幕を含めた生き残った者としての思いなのだなというところは伝わった
2. 人柄や日常の姿から、サーローさんの言葉に説得力や親近感は生まれたか?
- 日常の話をされている時と、自分の活動・仕事に対してお話をされている時の表情はまったく違うことが伝わってきたので、より一層仕事への思いが強い方だと思った
- 仕事を離れたところでのエピソードもあれば良かった
- やはり仕事以外のオフの時間の過ごし方ももっと見てみたかったです。そういう日常のシーンがあればあるほど、仕事の部分が際立つと思った。食事を惜しむぐらい仕事をしているのなら、そのシーンも見てみたかった
以上