放送番組審議会

第543回

開催日:2025年2月18日(火)
【課題】
テレメンタリー2025 屍を越えて オスロの灯 ~被爆者が紡いだ思い 広島
(2025/1/11放送)
出席委員(敬称略):

小川富之、大井美恵子、井筒智彦、稲田信司、喜多村祐輔、東山浩幸
※奥田亜利沙、木村文子(レポート提出)

 

合評での意見

【総合批評】

  • 箕牧さんを主人公にしながら、坪井さんからの継承、さらには若い世代への継承が描かれている。被爆についてよく知らない多くの方々にとっても、入り口としては入りやすかった
  • 被爆者と次世代の方々が共に活動している様子を伝える番組制作を継続してほしい
  • 海外取材だからこそできる番組づくりがあると思う。どんどん海外へ行って、世界の中での広島、平和の町ということを取り上げると価値は上がるのではないか
  • スピード感、ザッと見ることができたという点では良かった一方で、深みがどこまであったのかが課題として残る

 
【批評ポイント】

1.世界で「核のタブー」が揺れる中、日本被団協のノーベル平和賞受賞が持つ意義が伝わったか

  • 実際に活動されている姿や想いを知ることで、今回のノーベル平和賞の意義がさらに伝えられる内容になっていた
  • 田中煕巳代表委員のスピーチの内容、終わった後のインタビューでの「ホッとした」「“日本被団協”がポピュラーな言葉になった」といったコメントから、後世までリレーでつないでいける、核の威力と恐怖を実体験から語ることにより世界にメッセージを届けるといったことが伝わってきたのではないか
  • 葛藤というよりは箕牧さんの苦労のほうがより伝わった。ずっと思い悩んでいるというよりは、海外渡航のために3週間も入院生活をしていたとか、現地で車椅子に乗られている姿を見て、82歳で海外に行くだけでも大変なのに、いろいろ取り組まれていたという苦労はすごく伝わってきた
  • 地元メディアや現地オスロの人たちの声がなかった。海外メディアがどのように感じて、今後どのように伝えていこうとしていたのかといったことには興味があった
  • 内容が浅い。また次も見ようとは思わない。
  • 世界ではどういうことをしているのか。番組では本人たちの思いばかりで、他の方の思いがない。だから、全体の中での重み、意義がどれだけあるのか分からない
  • 海外の方はこの受賞をどう見ていて、そこに対して本人たちはどう思っているのか。「敗戦国が何を『原爆、原爆』と言っているのか、世界の現実を見ろよ」と海外の方が言ってもおかしくない。そういうコメントを取れば取るほど、余計に被爆者のメッセージは価値が出るだろう

2.先人の思いを背負い授賞式に向け準備を行う箕牧さんを通しての葛藤や、被爆者たちの歴史は描けていたか

  • 先人たちの思いを箕牧さんから、高校生平和大使も含めて戦争や被爆の実体験がない世代に伝えるのだというところはうまく表現されていた
  • 箕牧さんが主体だが坪井さんのことをもっと知りたいと思わせるような内容だった。箕牧さんの葛藤の点で言えば、被爆者という存在はひとくくりで捉えがちであるけれど、被爆者の中でも被爆の年齢で伝える重みの違いを悩んでいるということで、被爆者間でしか分からない視点というのも新鮮だった
  • 被団協の歴史が紹介されていたが、伝わりきらなかった部分も少しあった。苦労の時代というナレーションや映像もあったし、先人たちの苦労は、今回の取材と離れて過去の映像でも出てきていたが、もう少し膨らませたほうが良かったのではないか
  • 被爆証言をされているいろいろな方たちがどのように思っているのか、またその苦労話があると、その苦労の歴史が田中代表委員の言葉にしっかりつながるのではないか

以上