パソコンの処理性能を決めるCPU・GPUは、電源の性能次第でどんなパーツを搭載できるかが決まります。そのためBTOでゲーミングPCを買う人なら誰しも、電源をカスタムするかどうかで悩んだことがあるでしょう。
結論からいえば、電源ユニットをカスタムする必要性は、パソコンの用途によって変わります。例えばゲームを遊ぶだけなら標準の電源で大丈夫ですが、ゲーム配信や動画編集もしたいなら、より上位の電源にカスタムすべきです。
その理由も含めて、本記事ではBTOにおける電源選びについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
電源ユニットはBTOパソコンの主要パーツ
電源ユニットとは、パソコン全体に電気を供給するためのパーツです。パソコンの心臓部に当たる重要なパーツなため、BTOパソコンでは、ほぼ必ず電源ユニットがカスタムできるようになっています。
電源ユニットの役割は供給だけにとどまりません。コンセントから流れる交流電流を直流電流へと変換する役割もあります。なぜなら、パソコンを初めとする多くの電化製品は、交流電流で使用できないためです。
つまり電源ユニットには電気の変換と供給という、ふたつの役割があります。電源ユニットの役割を覚えておけば、どんな電源ユニットを選べば良いのかが分かるため、ぜひ覚えておきましょう。
良い電源ユニットの特徴
良い電源ユニットには以下ふたつの特徴があります。
- 特徴1. 供給可能な電気の容量が多い(ワット数)
- 特徴2. 電気の変換効率が高い(80PLUS認証)
このため電気の容量が多いほど、また変換効率が高いほど、電源ユニットは高価になっていきます。電気の容量が多いこと、変換効率が高いことの具体的メリットを見てみましょう。
供給可能な電気の容量が多いことによるメリット
電源ユニットの容量が多いと、以下のようなメリットを受けられます。
- より高性能なCPU・GPUを組み込める
- 買い替えの手間が少なくなる
- 電源ユニットが故障しにくい
パソコンパーツの中で電力を最も消費するのはCPU・GPUです。CPU・GPUは年々性能がアップしていますが、それと同時に消費する電力量も増加傾向にあります。つまり高性能なCPU・GPUを使用するには、それに見合う電源ユニットを選ぶ必要があるのです。
とはいえ、BTOの場合はメーカー側がCPU・GPUと相性の良い電源ユニットをあらかじめ選定してくれています。そのため「電気が足りない」というトラブルについては、まず心配ありません。
ただし、あらかじめ容量の多い電源ユニットを選んでおけば、将来的にパソコンを自前でアップグレードする際、買い換えたり組み替えたりする手間を省けます。将来的なアップグレードを加味するなら、容量に余裕を持って電源ユニットを選びましょう。
電気の変換効率が高いことによるメリット
電源ユニットの変換効率が高いと、以下のようなメリットを受けられます。
- 省電力になる
- 発熱が少ないため、パソコンが長持ちしやすくなる
- 静音性が高い
- パーツの保証期間が長い
パソコンの寿命に悪影響を与える主な要因は「発熱」です。変換効率の高い電源ユニットほど発熱が少ないため、パソコンが長持ちしやすくなります。発熱が少なければ冷却ファンの回転数を抑えられるため、静音性の点でも有利です。
また、変換効率の高い電源ユニットはパーツ自体の保証が長いため、トラブルが起きてもカバーしやすいというメリットもあります。
電源ユニットの種類
電源ユニットには種類が5つあり、パソコンの構造や大きさによって最適なものを選ぶ必要があります。
- ATX
- SFX
- EPS
- FlexATX
- TFX
これらのうち、一般的なタワー型のパソコンに使われるのはATXとSFXの2種類です。しかしながらBTOパソコンであれば、適切な規格の電源のみがラインナップされています。
つまりBTOでパソコンを買うなら、カスタム時も含めて電源の規格について気にする必要はありません。電源を選ぶときは、容量と変換効率だけ見ておけば大丈夫です。
80PLUS認証されているかが重要
電源を変換効率の高さで選ぶ際は、メーカー名などではなく80PLUS認証があるかどうかで判断しましょう。
数々の厳しいテストによって、変換効率が80%以上あることが証明された電源ユニットに与えられる認証のこと
とはいえ、BTOで買えるゲーミングPCは、ほぼ必ず80PLUS認証された電源のみ選べるようになっています。では何が重要なのかといえば、それは認証の「種類」です。
80PLUS認証には、変換効率の高さによって全部で6種類のランク付けがされています。最低ランクはスタンダードで、チタニウムが最高ランクです。
名前 | 変換効率 |
80 Plus スタンダード | 80 ~ 82% |
80 Plus ブロンズ | 81 ~ 85% |
80 Plus シルバー | 85 ~ 90% |
80 Plusゴールド | 87 ~ 92% |
80 Plus プラチナ | 89 ~ 94% |
80 Plus チタニウム | 90 ~ 96% |
これらのうち、コスパの面でもっとも人気が高いのは「80 Plus ブロンズ」です。BTOで標準搭載されている電源も、ブロンズ~ゴールド帯が多くなっています。
最高ランクのチタニウムは標準価格からプラス1~2万円ほどかかってきますが、スタンダードに比べて最大10%も高い変換効率が得られる点が魅力的です。予算に余裕があれば、ぜひアップグレードを検討しましょう。
BTOの電源ユニットの選び方
BTOパソコンの電源カスタム項目は、メーカーによって選ばれた最適なパーツがすでにラインナップされています。その数は2, 3種類か、多くても10数種類です。自作だと何百種類もの中から探す必要があるため、BTOにおける電源選びは比較的ラクなほうといえます。
とはいえ、パソコン初心者だと2, 3種類だけも何を選べば良いのか迷うはずです。そこで初心者がBTOで電源をカスタムするときは、以下のような点を意識してください。
- 最大消費電力を計算して選ぶ
- 動画エンコードやゲーム配信をするかどうかで選ぶ
- ハイエンドマシンを買うなら電源ユニットも上位が安心
- CPUやグラボを交換する可能性があるかどうかで選ぶ
- 静音性を高めるために電源ユニットにこだわるのも手
最大消費電力を計算して選ぶ
電源ユニット選びの大前提は容量、すなわちワット(W)数です。最低でもパソコン全体の消費電力を上回る電気を供給できなければ、パソコンの動作は安定しません。
もっともおすすめなのは、パソコン全体で必要な消費電力に対して、2倍の電力を供給可能な電源ユニットを選ぶことです。例えばパソコンの消費電力が300Wなら、600Wの電気を供給できる電源ユニットが最適です。
なぜそこまで余裕を持った方が良いのか? それは、消費電力ギリギリの最大容量だと電源ユニットに強い負荷がかかり、パーツが故障しやすくなるためです。
なお、パソコンの消費電力を計算する際は以下のサイトが便利です。パーツの種類を選ぶだけで消費電力を算出してくれる簡単仕様なため、ぜひ活用してください。
参考 PC電源容量計算【2021年最新版】BTOパソコンミニ館動画エンコードやゲーム配信をするかどうかで選ぶ
ただゲームを遊ぶだけでなく、動画のエンコードやゲームのライブ配信も行うという場合は、標準の電源より上位のものを選んだ方が安心です。
なぜなら動画エンコードやゲーム配信は、非常に多くの電気を消費するためです。具体的には、ゲームのみをプレイしているときと比べて、ゲームをライブ配信しているときは20~30%も消費電力が多くなります。
以上を踏まえると、動画エンコードやゲーム配信をする場合、標準搭載の電源よりもワンランク上の容量があるパーツを選ぶのがおすすめです。例えば標準が500Wであれば650Wに、650Wであれば700~800Wにアップグレードしましょう。
ハイエンドマシンを買うなら電源ユニットも上位が安心
高性能な最新CPU・GPUや、100GBを超える大量のメモリを積むハイエンドマシンを買うなら、電源ユニットも上位のものにカスタムするのがおすすめとなります。
なぜなら上位の電源ほど変換効率が高く、発熱量が少ないためです。発熱量が少なければパソコン自体も壊れにくくなります。
ハイエンドマシンを手に入れる喜びはひとしおですが、その反面、壊れたときのショックも段違いです。せっかくハイエンドマシンを買うなら、電源ユニットにもしっかりこだわりましょう。
CPUやグラボを交換する可能性があるかどうかで選ぶ
パソコン全体の消費電力のうち、約8割を占めるのがCPUとグラフィックボード(GPU)です。そのためCPU・GPUに何を選ぶかで必要な電源容量が大きく変わってきます。
しかもCPU・GPUの消費電力は最新モデルが出る度に増加しています。これはつまり、将来的にCPU・GPUを交換したり増やしたりする際に、電源ユニットを交換する必要性が出てくるということです。
そのような手間を省きたいなら、はじめから容量の大きい電源ユニットを選びましょう。例えば1000W以上の電源なら、用途が大きく変わらない限り向こう数年は電源ユニットを交換しないで済むはずです。
静音性を高めるために電源ユニットにこだわるのも手
パソコンの静音性向上といえばCPU・GPUの水冷化ですが、実は電源も静音性に関係しています。
なぜなら電源ユニットは、パソコンが必要とする電気が多くなればなるほど発熱が増え、その結果として冷却ファンの回転数が上がるためです。
電源ユニットで静音性を向上させたければ、電源容量が多く、なおかつ変換効率が高い電源ユニットを選びましょう。そうすることで電源にかかる負荷が減るため、ファンの回転数を低く抑えられます。
BTOの電源ユニットは基本的に500Wでも十分ではある
10万円ほどの手頃なゲーミングPCには多くの場合、容量500Wほどの電源ユニットが標準搭載されています(記事執筆時点:2021/07/16)。ただゲームを遊ぶだけであれば、この500Wでも必要十分です。
しかし予算が許すのであれば、電源容量にはもう少し余裕を持たせたほうがよいでしょう。なぜなら、将来的に「動画編集もしたい、CPU・GPUを交換したい」となったとき、500Wの電源では容量が不足するためです。
ゲームの要求スペックはどんどん高まっているため、ゲーマーであればCPU・GPUを交換する機会はいずれ必ずやってきます。
そんなときのために、あらかじめ容量の大きい電源ユニットを組み込んでおけば、電源を選ぶ、交換する、そして古い電源を処分するといった諸々の手間をすべて省けるのです。
また、良質な電源を使えばパソコンが壊れにくくなるというメリットもあります。ゲーミングPCは決して安い買い物とはいえないため、保険という意味でも電源ユニットのカスタマイズは有用なのです。
BTOメーカー別のおすすめ電源ユニット
ここからは、以下に示すBTOメーカーのおすすめ電源を紹介します。
各BTOは選べる電源メーカーが大きく異なり、中にはメーカー名が非公開となっているBTOもあります。メーカー名が公開されているかどうかは電源選びの基準のひとつとなるので、ぜひ参考にしてください。
ドスパラ
- Enhance
- Seasonic
- SILVERSTONE
- 一部メーカー不明
ドスパラでは取り扱われている電源メーカーは上記の通りです。標準搭載の電源はメーカー不明なものが多いですが、上位パーツはメーカー名がしっかり開示されています。中でもSeasonicとEnhanceの電源は高品質なことで評判です。
BTOの中には電源のメーカー名を一切開示しない業者が多いのですが、これを踏まえるとドスパラはかなり親切なほうといえます。
[dospara]パソコン工房
パソコン工房で取り扱われている電源はいずれもメーカー不明です。80PLUS認証は付いているようなので品質は十分と思われますが、メーカーにもこだわりたい場合は他のBTOにするか、BTOに電源のメーカーを問い合わせるようにしましょう。
[PCkobo]サイコム
- ANTEC
- CoolerMaster
- Corsair(コルセア)
- Enermax
- Fractal Design
- SILVERSTONE
サイコムのパソコンは少々値が張りますが、その分カスタマイズ性は高いという魅力があります。それは電源のカスタムでも同様で、他のBTOと比べてサイコムの電源メーカーのラインナップは最多です。
しかもANTECやCorsairなど、ハイエンドマシンに組み込むのに申し分ない品質の電源メーカーばかりです。サイコムならどの電源を選んでも失敗しにくいでしょう。
[sycom]ツクモ
- Apexgaming
- CWT
- Enermax
- Seasonic
- Thermaltake
ツクモもサイコムに劣らず、様々なメーカーの電源が選べます。ApexgamingやSeasonicなどコスパに優れたメーカーが多いため、品質と価格を両立させやすいです。
[tsukumo]G-Tune
G-Tuneで取り扱われている電源はいずれもメーカー不明ですが、パソコン工房と同様80PLUS認証は付いているようです。メーカーにもこだわりたい場合は他のBTOにしましょう。
[mouse]BTOの電源ユニットの選び方まとめ
高品質な電源ユニットは、「より高性能なCPU・GPUを組み込める」「発熱が少ない」というメリットがあります。そのため、BTOの電源ユニット選びは以下のような指針で行いましょう。
- ハイエンドマシン(目安30万円以上)を買うなら、ワンランク上の電源にアップグレードするのがおすすめ
- 動画エンコードやゲーム配信など、ゲームを遊ぶ以外に処理の重い作業をするならワンランク上の電源にアップグレードするのがおすすめ
- 将来的に交換の手間を省きたいなら、標準の電源より容量の多い電源を選ぶのがおすすめ
- パソコンの静音性を高めたいなら、標準の電源より容量の多い電源を選ぶのがおすすめ
- ミドルクラス以下のパソコンをゲーム用途でのみ使い、なおかつパーツ交換や買い換えの手間をいとわないなら、標準電源のままでOK
- 主要BTOの中で、電源メーカーの開示があるのはドスパラ、サイコム、ツクモの3社。特にサイコムの電源は外れにくい
電源ユニット選びでとにかく重要なのは、目的に合わせて最適なものを選ぶということです。ゲームを一般的な画質で遊べれば十分なら1000Wの電源はオーバースペックですし、動画も配信もやりたいなら500Wの電源では足りません。
パソコンの用途を改めてよく考え、できれば将来のパーツ交換のことも織り込んでから、電源ユニットを選ぶようにしましょう。
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