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「ワープする路面電車」制作プロデューサーインタビュー

2018年4月にオープンした「THE OUTLETS HIROSHIMA」(広島市佐伯区石内東)1階にあるプロジェクションマッピングが話題となっている。会場に設置された本物の路面電車3両の車体と床をスクリーンに見立て、ニューヨークやリスボン、はたまた空や海中まで、さまざまな世界を投影する、その名も「ワープする路面電車」。
イオンモール株式会社からの依頼を受け、広島ホームテレビが、新進気鋭のクリエイターチーム、AR三兄弟とタッグを組んで制作にあたった。来場者が自分の好きな映像を選べるという演出も斬新。また広島らしさにこだわり、広島を代表するアーティスト奥田民生さんの楽曲の使用も実現するなど、今注目を集めている。当マッピングの制作プロデューサー・広島ホームテレビ山下晴史氏に、その制作過程と今後の展開について聞いた。

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「ワープする路面電車」を広島ホームテレビが制作するにいたった経緯は?
 今回の企画は、「イオンモールさんが新しく広島に作られるアウトレットモール1号店の中に、広島電鉄の路面電車を展示する広場が出来る。何か面白いことが出来ないか?」というお話から始まりました。「ジ アウトレット広島」のコンセプトが「地域創生型」ということから、地元企業である広島ホームテレビにお声掛けいただいたのだと思います。
テレビ局が、今回のような映像コンテンツをプロデュースするというのは珍しいのでは?
珍しいと思います。
弊社では5年前からプロジェクションマッピングの制作を行っています。新規事業展開ではありますが、畑違いの分野だとは思っていません。これまで蓄えてきた「テレビの力」を発揮できる分野だと感じています。企画力、プロデュース力、編集、CG制作、プロダクションとのネットワーク・・・といった様々なコンテンツ制作力に加え、番組・イベントを通じての発信力、そういった「総合力」がわれわれの強みです。
まず、会場に行って驚いたのは、本物の路面電車の圧倒的なスケール感でした。
車両と床面に投影されるので迫力がありますね。
あの車体は、過去実際に広島市内を走っていた広島電鉄のドルトムントの車両なんです。長さ30メートルの車体と床に11台のプロジェクターを使って映像を投影しています。
これまでも、えひめこどもの城のデジタルアートアトラクションや、32mの地下通路で展開するアイネスフクヤマのプロジェクションマッピングなど手がけてきましたが、今回の作品がもっとも大きく屋内の常設では中四国最大です。
来場者自身が、自分の行きたい場所を選び、その世界が目の前に現れる・・・という演出も、面白いですね。

みなさんが行きたい世界にワープする路面電車なんです。最初、このお話を頂いたとき、新しい商業施設なので、ただ投影するだけのプロジェクションマッピングにはしたくないと思いました。単なるインタラクティブにもしたくなかった。なぜ電車に投影するのか、それを裏付けるストーリー性が欠かせないと思いました。その時、目に留まったのが、六本木ヒルズ展望台で開催されたプロジェクションマッピング「星にタッチパネル劇場」でした。スマホを使ったAR三兄弟*1さんの新しい世界に大いに感銘を受け、今回の作品には、ぜひ力をお借りしたいと思い、「星にタッチパネル劇場」の映像を手がけていたWHITE BASE*2さんと親交があったので、すぐに連絡を取ってもらいました。

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AR三兄弟さんとの仕事はいかがでしたか?

最初話を持って行った時は、断られるのではないかと心配しましたが、電車に投影するという面白さから二つ返事で引き受けて頂きました。
まず彼らと仕事をして一番感じたのが「良い作品を作る為には絶対に妥協しない」という強い姿勢です。あたり前とも言えますが、実際に最後まで貫くのは難しいことです。それともう一つ。発想が斬新で、話のテンポに人を惹きつけるものがありました。
時には意見が衝突することもありましたが、みんなが本気でぶつかり合い、そうしたことも含めて、最後まで楽しく仕事が出来ました。

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今回、制作にあたって一番こだわったところはどういった点ですか?

2つあります。ひとつは、先ほどもありました、電車の行先とカラーを来場者自身が選択できるという点です。参加型、体験型にしました。 そして2つ目が「広島らしさ」です。せっかく広島にできる施設ですので「広島らしさ」を要素に加えたいと思いました。広島の風景も映像の中に登場しますが、「ワープする路面電車」の時間の合間にも映像を投影し、様々な広島電鉄のデザインに彩られた電車を楽しんでいただけます。これもまた注目して頂きたいポイントの一つです。広島東洋カープカラーの電車も登場するんですよ。


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オープニングまで順調に制作は進みましたか?
 新しい試みですので、問題、課題の連続でした。スケジュールも大幅に押して、最終調整が終わったのは、何とオープン直前でした。電車という大きな対象へのマッピングゆえの映像表現の難しさやAR三兄弟さんの演出意図を映像化する難しさ、4kを超える解像度での上映システムを構築する難しさがありました。今回のマッピング映像のディレクションを始め、投影設計や投影システムを担当するWHITE BASEさんもギリギリまで時間をかけて、実現に向けて頑張ってくれました。
オープニング後の反響はいかがですか?
おかげさまで、多方面からご好評を頂いています。特に小さいお子様は、大好きな電車に加え、床に投影される色鮮やかな映像の動きが楽しいようです。その姿を親御さんが撮影される姿が多く見られます。 若い人たちは、スマホを使って遊べるというところが面白いようで、土日などは予約を開始して10分経たないうちに受付終了となるなど予想を越えた反響でした。 他にも、驚いたのは、ご年配の方の反応が意外にも良いということです。スマホで参加はしなくても、映像を見ているだけでもとても楽しいという声を頂きます。今回、プロジェクションマッピングになじみのなかった世代の方にもご覧頂く機会を提供できたことは、われわれとしてもうれしかったですね。他にも、電車好きの方や映像制作に関わる方たちの注目度も高いと聞いています。
今後の展開は?
夏、秋、冬と季節毎に新しい映像を投入予定です。
夏バージョンは6月29日から始まります。ぜひご期待ください。

*1 AR三兄弟
最新テクノロジーを使ったり使われたりしながら、あらゆるジャンルを昭和テイストで拡張する、やまだかつてない開発ユニット。
長男 川田十夢、次男 髙木伸二、三男 弘田月彦。
主な仕事に、六本木ヒルズ『星にタッチパネル劇場』、情熱大陸、ANREALAGE 2017 S/S PARIS COLLECTION、ルイ・ヴィトンコラボなどがある。

*2 WHITE BASE, LLC
プロジェクションマッピングや3D映画、映像による空間演出など、そのプランニングから制作までを行う映像制作ユニット。