温暖化の影響で、今スズメバチの生態に異変が起きています。秋に凶暴化するスズメバチが増える中、危険な巣の駆除に挑む夫婦スズメバチハンターを取材しました。
■「虫が大嫌い」な妻が…
強烈な毒針で人を襲うスズメバチ。去年は国内で21人が刺され亡くなっています。そんなスズメバチの駆除に、連日奔走しているのがスズメバチハンターの内山さん夫婦です。夫・周士さんと妻・千沙都さん。二人三脚で依頼者の安全を守るスズメバチハンター夫婦の一日に密着しました。
静岡県西部を中心に年中無休で依頼を受けている内山さん夫婦。4人の子どもたちと暮らしながら、スズメバチの駆除を行っています。
周士さんは高校生の頃から父親の仕事を手伝う形でスズメバチの駆除に携わっている、この道25年のベテランです。一方、結婚後に周士さんの仕事を手伝うようになった千沙都さん。電話番をするぐらいの軽い気持ちで始めたそうですが…。
テイクケア 内山千沙都さん
「依頼もすごく増えてしまって、もう私も行かなきゃ追いつかない。元々、虫が大嫌いなので、もちろんハチも大嫌いですし。涙流しながら(スプレーを)プシューってやったのを覚えている」
そんな千沙都さんがハチ駆除を手伝う理由は…。
千沙都さん
「旦那のかっこいい姿が見れるから(笑)自分じゃできない駆除をスッと終わらせるのですごい」
周士さん
「仲良くなかったらできない」
千沙都さん
「会話はハチの話ばかりだよね」
秋口の今の時期はスズメバチの子育てシーズン。気性が荒くなるため、駆除の依頼が殺到するといいます。
■古い巣の横に新しい巣で“巨大化”
この日千沙都さんが訪れたのは、生活道路に面したお茶の工場。そこにキイロスズメバチが巣を作ったといいます。
体長は2センチほどのキイロスズメバチ。家の軒下など人の生活圏にも巣を作ります。特徴は「数と攻撃性」。1つの巣に生息する数が多いうえに、凶暴な性格で知られています。
「虫は泣くほど嫌い」と言っていた千沙都さんですが、今や慣れたもの。
千沙都さん
「あれか、ありましたね巣。シャッターで見えない部分があるが50センチくらいあるのでは」
遠くからでも確認できるほど大きな巣。防護服を着て近付くと、予想外の事態が発生。
千沙都さん
「ハチの巣が2つくっついている」
古い巣の横に新しい巣が作られ巨大化していることが判明。古い巣も活用されているのであればハチの数も多くなるため、駆除のリスクは高まります。
巣のサイズから1000匹はいるとみられるキイロスズメバチ。カメラを巣から離しても、執拗(しつよう)に襲い掛かってきます。
昼になって周士さんが合流。安全を考え、駆除はスズメバチが活発に動き回る日中を避けて、日没後に行うことを決めました。
周士さん
「大きい方の巣穴にふたをしめて、周りのハチと古い方の巣を取る。千沙都がふたして周りにスプレーか、小さい方を取るかどっちか任せるけど(ハチに)囲まれたくないんでしょ?」
千沙都さん
「じゃあ、どっちしてほしい?私にどっち求める?」
周士さん
「そりゃ本音は後ろで(サポート)やってほしいけど」
千沙都さん
「日中、めちゃめちゃ囲まれた。だからどこにいても(ハチに)囲まれる。フェロモンバッシバシに付けられてる」
周士さん
「じゃあ俺の後ろでやってよ。作業は全部やるから」
■攻撃態勢のハチが一斉に飛び立つ
完全に日沈み、街灯もない暗闇の中駆除がスタート。
周士さん
「隣の巣、今までにああいうの経験したことないんで」
不安を抱えながらの作業。まずは巣の様子を見ることに。夜になりハチは落ち着いた様子。駆除を始めようとしたその時…。
誤ってカメラマンがシャッターに接触。その結果無数のハチが一斉に飛び立ち、攻撃態勢に。これに対し、殺虫スプレーを構える千沙都さん。脚立の上でスズメバチとにらみ合うは周士さん。
そして、周士さんの合図に合わせ千沙都さんがスプレーを噴射、周囲を飛び回るスズメバチを弱らせます。その間に、周士さんが巣の中にスプレーを噴射。中に残るハチや女王バチを一網打尽にしていきます。
夫婦の息の合ったコンビネーションにより、ほとんどのスズメバチを駆除。巣を壊すことに成功しました。
周士さん
「(Q.(見えているのが)巣の本体?)そう、これがよく言うハニカム構造。一番上に1段目があるんで。9段」
巣は9段にも及ぶ巨大なサイズ。ちなみに古い方の巣は使われていなかったそうです。
■11月も警戒「暖かいと活動が長く続く」
危険を顧みずに奮闘する夫を見て、千沙都さんはこのように話します。
千沙都さん
「あんなにハチに囲まれているのに冷静に駆除しているのがすごい。なんでそんなに落ち着いてられるんだろう」
周士さん
「1人じゃできないので。駆除している姿を見て、少しでもかっこいいと思ってもらえるならまた仕事していきたいなと思います」
千沙都さん
「ハチの駆除をやっていること自体が夫婦円満の秘訣。これからも夫婦で頑張っていければなと思います」
11月も半ばになり冬も目前ですが、スズメバチにはまだまだ注意が必要です。
玉川大学 学術研究所
小野正人所長
「キイロスズメバチやオオスズメバチといった種類のハチは、11月ぐらいまで巣が続くことがある。暖かいと活動が長く続くということがあるので、(11月)後ろまで巣作りが伸びるということになると気をつけなければいけない」
(「グッド!モーニング」2024年11月16日放送分より)