福島第一原発周辺で最も復興が遅れている福島県双葉町で、世界初の「魔法の糸」が生み出され、復興のシンボルとして注目されています。
原発からおよそ4キロ。双葉町の中心部にある時計は、あの震災の瞬間を刻んだままです。
2年前に一部の地域で避難指示が解除されましたが、現在、町に住んでいるのは170人余り。いまだにスーパーも学校もありません。
双葉町総務課 橋本靖治課長
「元の双葉町に元通りにするのは難しいことだと思っています。(町民が)戻ってこられるような環境整備を進めるところから取り組みたいと思っています」
ようやく復興が始まったばかりの双葉町。大津波に襲われた大地にひときわ目立つ建物があります。おととしオープンしたここは、糸をより合わせて作る撚糸(ねんし)を作る工場です。その糸は「スーパーゼロ」と呼ばれ、タオルなどに加工されます。
従業員
「今から吸水実験をしていこうと思います」
吸水力は普通のタオルの1.5倍、その違いは明らかで、まさに「魔法の糸」です。
さらに今年、「超無撚糸」と呼ばれる世界でも例のない特殊な糸を開発し販売しています。吸水力をさらに高め、バスタオルは通常の半分の大きさで全身の水分を拭き取れるといいます。
この工場の従業員は半数が地元・福島の出身です。
小学5年時に被災 塙瑞基さん(24)
「(地元出身の従業員は)皆復興への強い気持ちを持って入社しているので、同じ思いで今働いています」
今後は海外販売にも力を入れ、世界に福島産をアピールしていく方針です。
浅野撚糸 浅野雅己社長
「福島に工場を作って働けるのか、福島で作った糸は大丈夫か、そういう見方が多い。この糸が世界に広がっていくことが復興の大きな証、証明になっていく」