寝たきり母“殺害”初公判 介護から事件までの経緯明らかに

社会

 長年にわたる介護の末、寝たきりの母親を殺害した罪に問われている61歳の息子。3日の初公判で「母から頼まれた」と主張しました。

■「母から頼まれて」と息子主張

 92歳の母親の介護の末に起きた殺人事件の裁判が東京地裁で開かれました。

 前原英邦被告はおととし、東京・葛飾区の自宅で母親の房子さんの首をひもで絞めて殺害した罪に問われています。

 2014年に父親が死亡し、母・房子さんと2人暮らしになった前原被告。5年後には母親が脳梗塞(こうそく)で入院し、「要介護5」と認定されます。

 母親は寝たきりで認知症の症状もあり、被告は仕事を辞め、自宅で介護に専念するようになりました。

 その3年後に起きた事件について被告は…。

前原被告
「母を殺したのは私です。ですが、母から頼まれてしたことです」

 争点は母親の依頼で行われた殺人だったのか否か。法廷では母親が前原被告に訴えた言葉が明かされました。

母・房子さん(弁護側の冒頭陳述から)
「チューブにつながれて入院したら家で死なせて」
「延命はしないで」
「人工透析は拒否する」
「死ぬ時は家で死にたい。いっそのこと、お前の手で最期を迎えさせてほしい。みじめな死に方をしたくない」

 そして、事件が起きた8月。

母・房子さん(弁護側の冒頭陳述から)
「もう死にたいんだ」

 発見が遅れないよう、訪問介護のある日を実行日に選んだという前原被告。犯行前後、スマホのメモには「生きる苦しみ限界 母を送ります」「もちろん葬儀はいらないです」「母を殺したのは私です」「母を残して死ぬことはできませんでした」「これから私も死にます」。

 事件当日、訪問介護のスタッフが母親を発見した際には被告自身も睡眠薬を飲んで倒れていました。

前原被告
「2人で天国に行こう」

 犯行直前には母親に、そう話していたことも分かっています。

 検察側は「経済的困窮から殺害した」などと指摘。判決は来月9日に言い渡される見通しです。