欧米では使える薬なのに日本では使えない「ドラッグロス」の問題で新たな取り組みが始まっています。
患者が吸っているのは、日本ではまだ効果が認められていない薬。これはその「治験」です。今、この治験を巡り、ある問題が再燃しています。
済生会横浜市南部病院 呼吸器内科 宮沢直幹主任部長
「現に、患者さんに(治験への)同意がなかなか頂けなくて、日本では承認されないんじゃないかという薬剤もあるものですから、日本だけ医療レベルがどんどん下がっていってしまうということが起こり得ます」
欧米で承認された新薬のうち、日本で承認されていないのは143品目。その6割は開発に着手もされていません。日本では使える見込みがない「ドラッグロス」です。背景には、薬の開発を巡る環境の変化があります。
今、世界の新薬の8割を占めると言われているのがスタートアップ企業。人口減少が確実で、言葉の壁もある日本での治験は敬遠されがちです。
そうしたなか、治験のハードル自体を下げる取り組みが始まっています。
肺疾患の患者
「(治験は)悪く言うとモルモットみたいな感じかもしれない(と思っていた)が、先生から丁寧な説明があったので大丈夫かなと思って受けました」
男性は肺の疾患が対象の治験に参加しています。期間は3年間。12回の診察が必要です。使っているのは、大手製薬会社が本格運用を始めたばかりの治験アプリ。体調に変化がなかったかを週に一度、アプリで病院に報告しています。
肺疾患の患者
「少し診てもらうのに通院の時間と待ち時間が結構負担になる場合があるので、それがないと、かなり楽になるんじゃないかなと思います」
アプリを使うことで、12回の通院のうち、9回をオンラインで済ませられるほか、治験薬の配送もできます。
一方で、異変があればすぐに医療機関にデータを送れるため、安全性を確保しながら治験にかかるコストを4割ほど削減できたケースもあるということです。
国も動いています。厚生労働省の有識者会議は治験を推進するための今後の方針を取りまとめ、近く公表する予定です。