戦後80年、太平洋戦争の激戦地「硫黄島」もその姿を大きく変えるなか、天皇皇后両陛下による「慰霊の旅」が始まりました。
■「慰霊の旅」両陛下が初訪問
両陛下が訪れた硫黄島。本来、海の中にあるはずの沈没船がむき出しに…。
硫黄島で何が起きているのでしょうか。
その硫黄島に両陛下は7日昼すぎ、政府専用機で到着されました。
今年は戦後80年の節目。両陛下は今年、沖縄県、広島県、長崎県を訪問される予定で、硫黄島は、その最初の訪問先となります。
小雨が降るなか、両陛下は7日、「戦没者の碑」などに花を供えて拝礼されました。
天皇陛下
「上皇上皇后両陛下の戦時中のご体験のお話など、平和を大切に思われるお気持ちについて折に触れて伺う機会がありました。愛子も両陛下から先の大戦について、お話を聞かせていただいております」
東京から約1250キロ離れた硫黄島。31年前には上皇ご夫妻も硫黄島を訪問されています。今月7日と同じように風が強く、曇り空です。ただ、当時から硫黄島に大きな変化が起きていました。
防災科学技術研究所 長井雅史主任専門研究員
「数百メートルぐらい元の海岸線より波打ち際に移動した」
上皇さまが訪れた当時は海岸から数メートル離れた場所にあった沈没船。それが、最近の映像では海岸沿いにあるように見えます。
専門家によりますと、海水面が下がっているのではなく、隆起によるもの。
防災科学技術研究所 長井雅史主任専門研究員
「島が隆起して海面に出る面積が大きくなっている。1年間に1、2メートルぐらい、大きいところでは隆起している」
1年で1メートルほど隆起し、その活動は今現在も続いているといいます。そこには硫黄島ならではの理由がありました。
■1年に1m 硫黄島なぜ変化?
1965年、硫黄島の基地で犬と遊ぶアメリカ兵。その当時、海の中に漂うように沈んでいた船は、終戦後に米軍が港湾整備のために沈めたとされるものです。それが今もはっきり残っています。島が隆起し、浮かび上がった船。
防災科学技術研究所の長井主任専門研究員は、1年に1メートルほど硫黄島は隆起していて、場所によっては、ここ10年で20メートル近く上がっている場所もあるといいます。さらに…。
防災科学技術研究所 長井雅史主任専門研究員
「小笠原諸島の中では最大の島になるかと思う」
1970年代の地図と最近の地図を比較すると、1周り大きくなっているのが分かります。面積は10年前と比べて1.3倍。
国土地理院によりますと、2014年に父島を抜いて小笠原諸島で1位となりました。
防災科学技術研究所 長井雅史主任専門研究員
「地下の浅い所にマグマが上がってきて押し上げていることと、マグマ自体の量も多いのではと思うが、あまり分かっていない。こういう変動は他の火山では、なかなか見られない。非常に(隆起の)スピードが速いのが硫黄島の特徴。昔の海岸線だった所は陸になってしまって、草が生えたり、小さい木が生えてきたりする」
今年2月にも小規模な噴火が起きるなど活発に活動を続ける硫黄島。
長井主任専門研究員によりますと、限界はあるものの、今後も島は大きくなる可能性があるということです。