地球温暖化対策で航空業界でも脱炭素化が求められる中、いま“使用済みの食用油”の活用が本格化しています。国内初の大規模製造施設を取材しました。(4月19日サタデーステーションOA)
■USJで“廃食油”の活用進む
ユニバーサルスタジオジャパンの大人気アトラクション「ジョーズ」。お客さんが乗るボートの燃料、実は料理で使われた油です。
パーク内のレストランで使用される年間およそ189トンもの食用油の一部をジョーズのボートに再利用する取り組み。年間17トンものCO2削減につなげているといいます。
■CO2約8割削減 次世代燃料「SAF」
報告・白鳥宏亮(東京・羽田空港)
「今まさに燃料搭載しているが、この燃料に廃棄食用油が導入されている」
日本航空で新たに取り入れている、次世代ジェット燃料「SAF」。「使用済みの食用油」を再利用するなどした、持続可能な航空燃料のことで、CO2排出量をおよそ8割も削減できるといいます。
輸送の際のCO2排出量が自動車に次いで2番目に多い航空機。政府は2030年までに燃料の10%を「SAF」に置き換える目標を示しています。
日本航空総務本部 小川宣子副本部長
「(燃料を)使う立場として、我々ができることは何かということを考えて、今一番実現可能なものとして廃食油からやっていきたいというふうに考えました」
■世界で義務化加速 課題は安定供給
EUでは、今年からEU域内を飛ぶ燃料に「SAF」の使用を義務付けました。課題となるのが「SAF」の安定供給です。「SAF」を確保できなければ、国際便が減ってしまう可能性があるといいます。
日本航空総務本部 小川宣子副本部長
「日本に飛んできても、SAFが搭載できない課題があれば、他のアジアの国でSAFが詰めるところに行こうということになりかねませんので。家庭で使っている油から日本の経済問題まで大きくつながるような課題」
そこで、重要となる「SAF」の国産化。コスモ石油堺製油所に先月誕生した国内初「SAF」の量産設備では、提携している飲食店などから使用済みの食用油を回収。それを、巨大な蒸留塔で60ものフィルターを通すなど、不純物を取り除き、「SAF」を製造します。
コスモ石油SAF事業化プロジェクト 田沼俊介プロジェクトマネージャー
「茶色い廃棄食用油が、装置を通すことで無色透明できれいになる。これまで国内ではできたとしても1日数キロリットルくらいでしたが、年間3万キロリットル製造できるようになりました」
「SAF」およそ3万キロリットル使用した燃料では、東京ーロンドンをおよそ350往復できるといいます。しかし、政府が目標とする2030年までに全体の10%とする量には足りません。そこで重要となるのが家庭の食用油。
コスモ石油SAF事業化プロジェクト 田沼俊介プロジェクトマネージャー
「家庭から出る廃食用油は年間約10万キロリットルと言われていますが、ここが一つキーポイントになる」
事業系から出る使用済み食用油は、その大部分が回収されている一方で、およそ10万トンの家庭から出る使用済み食用油はほとんど回収できていないといいます。
コスモ石油SAF事業化プロジェクト 田沼俊介プロジェクトマネージャー
「(製造所のある)堺市では、家庭からの油の回収をできる仕組みも始まっています。回収の輪を広げてSAFの大規模で安定的な生産につなげたいと思います」