深刻化する“ペイハラ”対策は 広末さん逮捕で関心高まる

社会

 俳優の広末涼子さんが看護師の女性を蹴ったり引っかいたりしたとして現行犯で逮捕され、その後、釈放されました。今、医療や介護の従事者に対する「ペイシェントハラスメント」は大きな問題になっています。

■広末さん逮捕で関心高まる“ペイハラ”

河北総合病院 鎌田孝一院長
「患者さんからたたかれたとか暴言を受けたと看護師を辞めたりする」

 俳優の広末涼子さんが医療関係者に暴力を振るって逮捕されたことで関心が高まる「ペイハラ」=「ペイシェントハラスメント」。患者などによる医療・福祉従事者への暴言や暴力、ハラスメントなどの迷惑行為です。

 今月1日から東京都が「カスハラ防止条例」を施行するなか、ハラスメントを経験した人の割合では医療・福祉業界は約43%と業種別で2番目に多く、ここ3年間で「ペイハラが増えた」と答えた人も3割を超えています。

鎌田孝一院長
「(実際の経験率は)もうちょっと高いのではないか?当事者になっていなくても『見たことがある』とかなら100%でしょうし」

 実際にどんな行為があったのでしょうか。

鎌田孝一院長
「昔、ここの病院ではないんですけど、『交通事故の交渉を有利に持っていきたいので、いい診断書を書いてくれ』という。きちんと断りますけれども、それに対して非常にご立腹されて診察室から出ないとか、そういうような事件があった」

 ペイハラが原因で離職するスタッフもいて、医療崩壊につながる恐れも…。

ペイハラ被害に遭った元看護師
「点滴棒を振り回したりとか。病気によってコントロールできない方もいる。突発的に殴る・引っかく・かむなどは、日常的にあったのかな」

 2年前まで病院に勤務していた元看護師の男性。暴力行為だけではなく、「訴訟する」と脅されたり、精神的にも苦労は絶えなかったそうです。

ペイハラ被害に遭った元看護師
「(患者からの)要求が大きすぎるがゆえに、耐えられず退職される方は見たことがある」

 飲酒や薬物の使用、また終末医療などで精神が不安定な状況の患者もいます。さらに、認知症などの対応も必要だという難しさを抱えています。

■深刻化する“ペイハラ”対策は

 病院ではどんな対策をしているのでしょうか。

鎌田孝一院長
「カスタマーサービスを置いている」

 医師や看護師からの連絡ですぐに駆け付け、迷惑行為に対してトラブル解決を行う部署。警備のスペシャリストで、まずは言葉での交渉を行いますが…。

CS推進課スタッフ
「緊迫した状況の時には生命の危機があると判断してすぐに抑える」

 医師や看護師を暴力から守るために、さすまたなどを使って取り押さえる訓練もしています。

 トラブルを未然に防ぐため、普段から院内を巡回。そして、医師からの要望により診察室の横で待機することなども。さらに…。

鎌田孝一院長
「(職員の)心のケアセンターを常設している。認知症の患者に関しては『認知症ケアチーム』がしっかり対応」

 この病院だけではなく、監視カメラを導入する動きも広がっています。

 高齢化が進むなかで、医療介護業界の働き手を確保するためにも“ペイハラ”対策は大きな課題となっています。