日米関税交渉 総理側近を直撃…トランプ氏の“思いやり予算”増の要求どう対応?

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トランプ大統領、関税交渉では牛肉やコメ、車などといった具体的な品目をあげ日本に対応を求めてきています。この週末、政府が慌ただしく対応に追われる中、石破総理の側近らを千々岩記者が取材しました。

■石破総理“週末返上”で協議

(千々岩森生記者)「石破総理です。石破総理を乗せた車列がいま総理公邸に到着しました。この後、アメリカとの関税協議に向けた作戦会議を行います」
19日の石破総理と赤沢大臣らの協議には、外務省幹部に加え、農林水産省や国土交通省の幹部も参加しました。
(赤沢亮正 経済再生担当大臣)「これは国難ともいうべき状況で、申し訳ないけれども関係省庁の幹部の皆様のお時間ももらったということです」
赤沢大臣はトランプ大統領との会談の内幕をこう明かしています。
(赤沢亮正 経済再生担当大臣)「(トランプ大統領が)『私から少し話していいかい?』と。ぜひお願いしますと。おっしゃったことの中で、明らかに大統領の中の優先順位がかなりはっきしてきたところはあるので。彼が自分の言葉で話しておられるやつは間違いなく関心が高い」
50分におよぶ会談でトランプ大統領は「アメリカ製の車が売れないこと」「貿易赤字が多いこと」そして、「在日アメリカ軍の駐留経費が高いこと」への不満を述べたといいます。
確かにトランプ大統領はこれまでも…
(トランプ大統領)「アメリカは日本を守るが、日本にアメリカを守る義務はない。アメリカは日本を守るために何千億ドルも払っている。日本はまったく払っていない」
しかし実際、日本は在日米軍の駐留経費、いわゆる「思いやり予算」の額を5年ごとにアメリカと協議し、今も年平均2000億円以上支払っています。
駐留経費の増額要求にどう対応すべきなのか?

■“思いやり予算”増額要求に日本は

石破総理の側近で安全保障を担当する長島昭久補佐官に聞きました。
Q.まず補佐官としての受け止め、今回の協議をどう見た?
(総理補佐官(安全保障担当)長島昭久衆院議員)「そうですね。かなり両国のギャップは大きい。隔たりは大きいのでかなりしんどい、厳しい交渉になるのだろうなと思います」
Q.在日米軍の駐留経費の話、これからどうやっていけばいい?
(総理補佐官(安全保障担当)長島昭久衆院議員)「米軍兵士の給料以外はほとんど日本が負担していますので、これ以上この部分の負担を増やすという話はなかなか考えにくいと思っています」
日本は「思いやり予算」で、日本人従業員の給料や、施設の建設費と修繕費、電気・ガス・水道代などの光熱費まで駐留にかかる経費のほとんどを負担しています。
Q.これ以上出すのであれば事実上(米兵の)人件費
(総理補佐官(安全保障担当)長島昭久衆院議員)「おっしゃる通りで、これ以上出すと“傭兵”になっちゃうんですよね。“アメリカの兵隊さんを日本で雇う”みたいな話になってしまうので」
Q.ちょっと異様な話ですよね
「これはアメリカの軍人さんのプライドも許さないだろうと思いますし」
石破総理は20日、出演したNHKの「日曜討論」で「安全保障と貿易は違う分野の話で、絡めて議論するのは正しいと思っていない」と述べ、駐留経費などの問題は関税交渉と切り離したい考えを示しました。
しかし、ある外務省幹部は危機感を抱いています。
(外務省幹部)「トランプ大統領を納得させるためには、最終的に駐留費の話を合意事項に入れざるを得ないかもしれない」
さらにベッセント財務長官らは、日本への輸出を拡大したい農産物の品目にコメや牛肉、魚介類、じゃがいもなどを列挙し、関税以外の障壁を取り除くことも求めてきたといいます。

■農産品どう交渉?政府が材料洗い出し

20日、佐賀県伊万里市で開かれた農協の集会に参加していたのは、参議院の農林水産委員長を務めた山下雄平議員。
(自民党 山下雄平 参院議員)「1日も欠かすことができない食を、トランプさんから強く言われたから、それを引きずり出すみたいなことになったら、我々の食を犠牲にして、アメリカとの関係を維持していくというのは本末転倒だと思うんです」
参議院選挙を夏に控え、地元の農家を回って要望を聞いています。
(自民党 山下雄平 参院議員)「コメを日本に入れろなんかもっての外じゃないかと」
(コメ農家百武彰規さん)「絶対いけないですね。いけないと思いますよ。コメはやはり日本の食であるんで、日本で作ったやつを日本の方に食べていただきたいっていうのが一番」
(自民党 山下雄平 参院議員)「そこは僕らも必ず、我が国の食と農を守れるような政権であるべきだと言い続けますので」
(コメ農家百武彰規さん)「ダメだったら落ちらんばいかんですね」
(自民党 山下雄平 参院議員)「そうならないように、ちゃんと一生懸命やっていますので」

政府は今月中に予定する2回目の協議に向け、交渉材料の洗い出しを急ぐ考えです。
Q.コメ不足とかコメの値段が上がっている中で、カリフォルニア米を逆に入れることがウィンウィンの関係になるんじゃないか、という声も一部ではありますけれど?
(自民党 山下雄平 参院議員)「それは短期的な、足元の去年から今年にかけてコメが足りないという話になっていますけれども、じゃあ輸入したことによって、その輸入分以上に日本のコメ農家の撤退を促してしまうことになるので、そうなるとさらに自給率をどーんと引き下げてしまうことになるんじゃないかと、すごく心配しています」

4月20日『有働Times』より