【独自】東北道逆走“巻き込まれ被害者”語る「ブレーキ踏んだ時には目の前に追突車」

社会

26日夜、栃木県の東北自動車道で42歳の男性が運転する車が逆走し、3人が死亡、10人がけがをした事故で、新しい情報が入ってきました。逆走した車のブレーキ痕が残されていなかったことが新たに分かりました。番組は事故に巻き込まれたドライバーに話を聞くことができました。

■「視界悪くブレーキ踏んだが…」

(事故に巻き込まれた人)「煙というかモヤみたいな形でもう暗かったので、視界悪くなりそうだなと思ってブレーキちょっと踏んだ時には、目の前に追突していた車だとは思うんですけど、そこに当たったっていう感じです。視界も悪くなってブレーキを踏もうと思ったんですけど、ちょっとは踏んだと思うんですけど、その時にはすぐ煙見えたといっても結構すぐだったので(当たってしまった)」

26日午後10時過ぎ、栃木県の東北自動車道上りで、逆走車が次々に車と衝突する事故が発生、これまでに男女3人が死亡し、10人がけがをしました。事故後、現場の様子を捉えた映像には、激しい事故の様子が記録されていました。
片側二車線走行の現場。救急車両やレッカー車が待機する中、その先には大破し衝突した乗用車が4台、数メートル先には大型トラックも確認できます。さらにこの地点から1キロほど先に進むと…完全に大破した車と白い乗用車が確認できます。
(内海陽太朗記者)「午前4時半です。現場にはまだ車両が残されています。どちらも前方部分が大きく大破しています」
事故は26日午後10時過ぎ、那須塩原市の東北自動車道上り線で逆走した車が正面衝突し、逆走した車を運転していた栃木県宇都宮市の前原勇太さん42歳と衝突された岩手県北上市に住む平岡勝利さん56歳が死亡しました。
さらに、約20分後、衝突事故の影響で渋滞した最後尾に大型トラックが追突する事故が発生し、追突された車に乗っていた埼玉県川越市の長嶋弓子さん60歳が死亡しました。警察は追突した岩手県陸前高田市のトラック運転手、炭釜秀一容疑者を過失運転致死傷の容疑で逮捕しました。
Q.どういう音?
(事故現場付近の住民)「何かが破壊されたような音ですね。ガシャーンというような感じでね。2回くらい鳴ったような気がするけどね。もう車が4~5台くらい横転したり、ぐっしゃり潰れていたりしていたんですよね」
逆走車に正面衝突され亡くなった平岡勝利さんは、単身赴任先からGWで愛知県に帰省する最中だったといいます。また、逆走した車を運転していた宇都宮市の前原勇太さんについて、警察によるとアルコールや薬物などは検出されなかったといいます。また現場にはブレーキ痕が無く、減速することなく衝突した可能性があるといいます。
追突した事故現場の3台ほど後ろにいたという人物は事故直後の様子を語りました。
(事故現場の近くにいた人)「前走っていた車がハザードランプチカチカさせているんですよね。何かあるんだなというのは分かったので、徐々に減速して、その位置まで着いてみたら、もう完全に動かなくなってしまった。最初に止まってから動き出すまでに3時間くらいですね。夜中の日付が変わって1時ぴったりくらいにようやく動きだした」

さらに事故車をレッカー移動した会社は現場の惨状について…。
Q.現場見た時はどうでした?
(レッカー移動の担当者)「だいぶ車がめちゃめちゃになっていまして、自分たちが担当する車両を目視で確認するんですけど、原型が分からないような感じでしたので、自分が担当する車がどの車か探すのに手間取った感じ。恐らく対向で正面から車が来ても避けられないくらいの速度だったと思います」
この会社は全部で5台のレッカー車を現場に急行させたといいます。さらに事故が起きた周辺のインターチェンジについては…
(レッカー移動の担当者)「ちょっとインターチェンジ的には“逆走しかねないつくり”ですね。“黒磯板室インターチェンジ”なんですけど、X字の交差点で信号が付いている所でして、本当ですと右にしか行けないけど、逆走するとそのままパーキングエリアを通過して逆走で(高速に)入れちゃうんですよね…」
この周辺では過去にも逆走事故が起きています。
去年8月15日。東北道下りで乗用車が逆走した軽ワゴン車と衝突、それぞれの車を運転していた2人が死亡しました。事故直前、東北道を走る別の車のドライブレコーダーには逆走する事故車と見られる車の映像が記録されていました。
(運転手)「なんだあいつ!逆走だ、危ない!逆走している」
(同乗者)「危ない、危ない!」

■なぜ?接触後も約2キロ走行→衝突

相次ぐ逆走事故は何故起こるのでしょうか?今回の事故は黒磯板室インタ―チェンジ付近で逆走の通報が相次いだことから、警察はここから高速道路に入った可能性を視野に調べを進めています。取材などを元に当時の状況を再現します。
事故を起こした車が、この黒磯板室インターチェンジから高速に入ったとすると、最初の信号で進入禁止である、上り方面に進んだ可能性があります。
(草薙和輝アナウンサー)「ちょうど画面の中央あたり、道路が赤と青に色分けされている部分、ここは信号によって交通整理がされているようです」
専門家は、すでに最初の分岐点で判断を間違えていたのではないかと指摘します。
(交通事故鑑定ラプター 中島博史所長)「本来であれば下り(福島方面)は、この分岐ですぐに左にいかないといけない。ただここを左に入らず何となく直進のままこちらに進んでいくと、ここですね。左に行くんだ左に行くんだというつもりで来てしまうとここで曲がって入ってしまった」
(草薙和輝アナウンサー)「料金所を抜けると、すぐに上りと下り、東京と福島の分岐があります。どちらに進むかすぐに判断しないと、間違えてしまいそうです」
料金所をでたらすぐに「下り方面」に入るべきところ、信号まで進んでしまい、進入禁止である「上り方面」に曲がってしまった可能性もあります。車はインターチェンジ付近の500メートルほどの所で最初の接触事故をおこします。しかし事故をおこしたにもかかわらず、そのまま約2キロ走行。そして別の車と正面衝突し、後続車2台も巻き込まれました。
(草薙和輝アナウンサー)「逆走者による衝突事故は黒磯板室インタ―チェンジから3キロほど離れたこのあたりで起きました。ご覧のように、道路はまっすぐで片側二車線となっています。明かりは車のライトくらいですね」
(交通事故鑑定ラプター 中島博史所長)「1回事故を起こした時点で逆走であろうが普通に走っていようが、高速道路上で事故を起こしたら路肩に車を寄せて警察に通報し事故処理を頼むというのが通常の手順、通報義務がありますから、本来はそうするべきなんですけど、1回目の事故でなぜ止まらずに逆走を続けてしまったのか、1回目の事故のときにすれ違った車もあったろうに逆走になぜ気づかなかったのか。正常な判断ができる状態ではなかったというのは確かだと思います」
逆走する車と出くわす可能性もあるため、ドライバーは常に余裕をもった運転が必要だといいます。
(交通事故鑑定ラプター 中島博史所長)「逆走車がいたときにそれを回避する、自分の時間的な余裕がなくなることがある。車間距離を十分に空けていて、前の車が変だな、理由がないのに車線変更したな、逆走車がいると気づいて自分も車線変更できるくらいの、それに巻き込まれないだけの車間距離を空けて走れといいますが、車間距離を十分に空けることが大事」

4月27日『有働Times』より