豪雨災害で被害が大きかった広島県呉市では2日から仮設住宅への入居がはじまりました。
安定した生活が期待される一方で入居者の中には大切な思い出を失うという人もいます。
呉市天応地区に住む奈良井米子さん(76)。自宅の1階部分が土砂に埋もれました。
修理が難しいため家は取り壊すことを決め、しばらくの間、天応地区の仮設住宅に入居することにしました。
仮設住宅に住めるのは最長2年間。この間に入居者は次の住まいを探します。
避難所で暮らしていた奈良井さんにとって家で暮らせるのはありがたいと話しますが1つ気がかりなことが。
8年前に亡くなった、夫の辰雄さん(70)。
自宅には辰雄さんが描いていた油絵や、趣味だった登山道具などが多く残されています。
しかし、仮設住宅には最低限のスペースしかなく、全てを持って行くことはできません。
二人で行った海外旅行の写真も大切な思い出です。
一方、三原市と坂町でも3日から仮設住宅の入居が始まりました。
これで県内には169戸の仮設住宅が完成しました。
2日、奈良井さんは仮設住宅に入居するため避難所を出発。
職員から鍵を受け取り、新たな生活を始める仮設住宅の扉を開きます。
テレビや冷蔵庫など生活に必要なものは県から提供されました。
奈良井さんは50年以上住んだ自宅と一緒に、辰雄さんの荷物のほとんどを処分することにしました。
部屋には辰雄さんが写った写真を持ってきました。
奈良井米子さんは「(辰雄さんと)一緒に引っ越してきたのよね
やっぱり遺影は家に置いてきたこういう思い出だけでいい」と話します。
仮設住宅には奈良井さんの友人も入居しました。
「自分1人ではない」という思いを胸に奈良井さんは前を向きます。