広島土砂災害から9年…移り変わる伝承のカタチ

広島防災・災害

あの日の土砂災害は地域のコミュニケーションまでも奪いました。災害から9年経ち伝承は新しいカタチへうつり変わります。

「ここへ土砂がたまって高さでいえば車の上まで土砂がたまった。当時の泥が跳ね返ったのがついてます」

安佐南区八木に住む畠堀秀春さん(66)。9年前の土砂災害で自宅が被害にあった畠堀さんは、あの日から2年後被災者らとあることを始めます。

鉄板の上から漂う香ばしい匂いとお客さんの声であふれるこのお店。

畠堀さんの幼なじみ 西本祐二さん「(中学生の時)みんなで8ミリ映画を作った」

お好み焼き「春さん」畠堀秀春さん「波の音じゃ言ってこうやっていた」

一見普通のお好み焼き店に見えますが、このお店3月まで伝承を担う場となっていたのです。

2016年4月、「復興交流館モンドラゴン」が開設。「防災意識を風化させない・・・」そんな思いから畠堀さんは館長をつとめました。

畠堀秀春さん「自然災害にあうということは、そういう意識がないとまず最初の避難行動にうつるというきっかけにならない。それを皆さんにお伝えしていくのがぼくの役割」

被災者が焼き、被災者が食べる・・・お好み焼きがつないだ人との絆が災害によって失われた地域のコミュニケーションを取り戻してくれました。

畠堀秀春さん「対面でやるのが一番だよね。やっぱり話をしながら食べるというのが、すこしでも時間をここで長い間おれるじゃない」

畠堀さんの幼なじみ 西本祐二さん「被災者の人もここでお好み焼きを焼いていた。そういった人の集まりの話ができる場。ほかにはそんなところない」

ここで生まれた絆はさらに大きなものとなります。

畠堀秀春さん「(西日本豪雨の時に)熊野の被災地や安芸区の矢野の被災者がここに来られた。復旧から復興へというのはどうされたのかという話を聞かせてほしいと」

訪れる人との交流が災害から立ち直るための気づきを畠堀さんに教えてくれたといいます。

畠堀秀春さん「ああこういうことを住民は思っているんだなと、こういうことは気が付かなかったなと思うこともありますよ。いろんな声、考え方が今後の街づくりのアドバイスになっている」

伝承のカタチは今年、一つの節目を迎えました。

伝承館の管理を担う 高岡正文さん(72)「ここが広島市豪雨災害伝承館です」

あの日の記憶を伝える新たな場所はモンドラゴンからおよそ400m先に誕生します。案内してくれた高岡正文さんら住民と行政が一体となって作った「公設民営」の施設です。

この伝承館は当時の状況を伝えるだけではなく別の役割も担っています。

高岡正文さん「これが全部かまどベンチです。ここの座面を外すとコンロが出てくる。こういうものの使い方を練習しておかないと本当にできない」

また、この施設は防災用品備蓄庫も設置されていてアルコールや簡易トイレなど災害時に一時避難所にもなる設備が備わっています。

高岡正文さん「こんなことが起こって苦労したんだよということを伝えるだけじゃないんです。生き残っていただきたい、その術を伝承していきたい」

災害から9年…梅林小学校に、畠堀さんの姿がありました。モンドラゴンから伝承館へその魂は引き継がれていきます。

畠堀秀春さん「わかりやすく回答できる、あるいはわかりやすい体験ができる施設にして、今からの風化させない努力を続けていきたい」

新たな伝承館には豪雨災害の展示パネルのほかに、土石流をCGで再現した映像や被災者が当時の状況を語る動画などが放映されます。

また最大120人を収容できる研修室も設けられていて、段ボールベッドやAEDの使い方を学べる講座も開かれるということです。

広島市豪雨災害伝承館は来月1日に開館します