「わけのわからない…行っていないし殺人もしていない」DNA型一部不一致で弁護人 無罪を主張【記者が傍聴した裁判(2)】広島・福山市明王台殺人事件

広島

2025年1月31日

弁護人「それでは、これから弁護人の冒頭陳述として、弁護人の主張をお話ししていきます。
先ほど検察官が述べた起訴状の公訴事実と冒頭陳述は、検察官がこの裁判で証明しようとしている内容です。
これから述べるのは、弁護人が被告から話を聞き、証拠を見て、検察官の主張には疑問があると考えていることです。
裁判員、裁判官の皆様にこれからお伝えする内容は大きく2つあります。
1つ目は、刑事裁判における基本的な考え方。
そして2つ目は、この裁判において皆さんに検討していただきたい弁護人の主張についてです。
検察官は、被告が被害者の自宅である犯行現場に行き被害者を殺害したと主張しています。
しかし、被告は犯行現場には行っていませんし、殺人もしていません。
この裁判の争点は、被告が被害者を殺害した犯人かどうかということです。
皆さんには、検察官の主張と弁護人の主張に対して、被告が本当に殺人を行ったと言えるかどうかを判断してもらうことになります。
そこで、被告が犯人かどうかを判断する時に基本となる考え方についてお話しします。
その考え方とは「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則です。
今ここで行われているのは刑事裁判です。刑事裁判では、国の代表である検察官が被告が犯罪者であると訴え、刑罰を科すことを求めています。
このような構図となるため、万が一にも罪を犯していない個人が誤って有罪となり、刑罰を課されることになってはいけません。
そこで、刑事裁判においては、先ほど述べた疑わしきは被告人の利益にというルールが課されているのです。

(中略)

被告が犯人であるという点に疑問が残れば、被告は無罪とされなければならない。

弁護人「それでは次に、被告が犯人かどうかを判断する前に、皆さんに考えていただきたいことをお伝えします。
皆さんに考えていただきたいこととは何か。それは、事件現場から採取された血痕から検出されたDNA型に関する関係の結果をどう捉えるかです。
血痕に関する鑑定が、捜査機関によって平成17年、平成18年、平成19年、令和2年に行われ、裁判所によって令和6年に行われました。

(中略)

今回最も注目すべきなのは令和2年の鑑定において「D8S1179型」の座位において血痕からは13、15、16型が検出されましたが、
被告からは13、16型のみが検出されていて数値が異なっています。」

(中略)

DNA型鑑定の結果を根拠に検察官は被告が犯人であるとしていました。
先ほど述べた通り、DNA型に一致していないところがあることから、現場の血痕が被告のものとすることには疑問があります。

(中略)

疑わしきは被告人の利益に、という無罪推定の大原則の通り皆さんは、
検察官が合理的な疑いを超える程度に証明できているかを判断します。
証人の説明が合理的であると言えないときは検察官の証明には合理的な疑いが残り、被告は無罪と考えるべきです。


日をあらためて 2025年2月5日被告人質問―


弁護人「この裁判の1日目に公訴事実というのを検察官よりあって、被告はそれに対して記憶にないという風におっしゃっていたんですけども、これはどういう意味でしたか」
被告「行ったことがないのでわかりません」
弁護人「別の話を聞きますが、犯行現場である被害者の自宅に行ったことがありますか。
被告「いや、ございません」
弁護人「今回の事件の凶器のナイフなんですけども、見覚えはありますか」
被告「いや、ないです」
弁護人「この事件が起きた当時に被告が住んでいた自宅から果物ナイフも含めた贈答セットというのが見つかっているんですけども、その贈答セットについて何か知ってることありますか。」
被告「いや、ございません」
弁護人「被告の住んでいる自宅から台所バサミが見つかっていますが、それはどういったものですか」
被告「あれを離婚した女房が持ってきてくれたものです」
弁護人「また違う話を聞きますね。被告は靴は普段何センチを履いていますか」
被告「27センチ」
弁護人「基本的には27のセンチを履いている?」
被告「まぁ、たまに28センチを履くときもありますけど量販店か安い店で買った場合は27では合わないことがありますので、メーカー品は27センチを履きます」
弁護人「量販店で買う安い靴は28センチなんですか」
被告「はい」
弁護人「被告さんは令和3年10月に逮捕されてきょうまで拘留されている状況が続いていますが、それについて何か言いたいことがありますか
被告「あの訳のわからないというかやった思いのない事件に対して3年数カ月、今3カ月ですか、こういうところに監禁されていることが私には理解できません」
弁護人「他に何かこの場で言いたいことはありますか」
被告「早く出たいです」
弁護人②「犯行に使われたナイフ、それについてはもう全く見覚えがないという理解でいいですか。
被告「写真とかたくさんいただいてますけど、全然見た覚えはございません」
弁護士②「裁判の資料としての写真を見たけどっていうことですか」
被告「はい」
弁護士②「ハサミについては奥さんが別れた後に持ってきてくれたですかね」
被告「はい」
弁護士②「それなんで持ってきてくれたんですか?」
被告「覚えてないです」
弁護士②「ちなみにその時ナイフとかは一緒に持ってきてくれた記憶ありますか」
被告「いや、ないです」
弁護士②「今回その証拠でこのエスカットっていう贈答品の箱みたいなの見ましたよね。覚えてますか?」
被告「写真では拝見しました」
弁護人②「そこにナイフが2本ぐらいとハサミが1本ぐらい空いてる状況なのがあったの覚えてますか」
被告「わからない」
弁護人「その箱自体は見て、その写真以外では見たことない?
被告「はい」


*傍聴した記者の取材に基づいています。