◆2月21日
定刻となり、広島地方裁判所で始まった裁判員裁判。
法廷に現れた被告の男(32)。
黒色のフリースの上着に、下はスエットと比較的ラフな服装。
証言台で両ひざに手を置いて、終始姿勢よく、無表情で前を見据える姿が印象的だった。
事件が起きたのは3年以上前となる2021年10月。
無職の男(32)に問われている罪は3つ。
殺人・死体損壊・死体遺棄だ。
広島市佐伯区にある祖母宅で、祖母の交際相手だった男性(当時70歳)を
コンクリートブロックで複数回殴打して殺害し、その遺体を上半身・下半身・両腕
・両脚に切断、一部を海などに遺棄したとされている。
その凄惨さからか報道陣だけでなく一般傍聴者も多く駆け付けるほど注目を集めた。
裁判長の問いかけに男はー
「自分は殺してもいないし、解体もしていません 遺棄はしました」
その後の冒頭陳述で検察側と弁護側の主張は全く異なるものだった。
◆検察側主張~≪冒頭陳述≫
被告は、祖母の交際相手でよく祖母宅を出入りしていた被害者とかねてより折り合いが悪かった。
事件当時、祖母や母が留守のタイミングで祖母宅で被害者と偶然2人きりになった。
そこで、●さんから自分の生活態度や、母や叔父を罵倒されたことに激高し、
●さんの顔面をコンクリートブロックで複数回殴打して殺害。
その後、風呂場で●さんの遺体を包丁のようなもので切断。
上半身と下半身を祖母方の庭に埋め、両腕と両脚は海に捨てた。
その後2023年4月、埋めていた上半身と下半身を掘り返し、
ホームセンターで購入したコンクリートと一緒に麻袋に入れて再び海に捨てたという。
「殺害行為には殺意があり、終始、被告の単独で行った犯行だ」と検察側は主張した。
◆弁護側主張~≪冒頭陳述≫
事件当時、祖母や母が留守のタイミングで
祖母宅で●さんと偶然2人きりになり、その際に、かわいがっていたネコについてや、
実母・叔父の悪口を言われたことで、●さんを黙らせたいと思い、
とっさに玄関付近にあった石で●さんの頭部付近を2回殴打してしまった。
混乱した被告は、痛がっている●さんを玄関に置いてそのまま現場から逃げた。
しかし、不安で再び現場に戻ったところ、40歳くらいの黒い服を着た男(第三者)が
●さんの上に馬乗りになりブロックのようなもので、
何度も顔面や頭部付近を繰り返し殴っているところを目撃した。
その男に気付かれ、怖くなった被告は、男に命乞いをし、
男が解体した遺体の遺棄や現場の掃除などを手伝わざるを得なくなったという。
「●さんを殺害し、遺体を解体したのは見知らぬ第三者の男で、遺体の遺棄についても、男の指示で行った」と主張した。
また、下記についても、弁護側は裁判員に強く訴えていた。
「被告人は速やかに物事を処理する能力が低く、運転免許なども所持していなかった」
被告はまっすぐ前を向いたまま、うなずいたり反応したりと動くことはなかった。
*傍聴した記者の取材に基づいています。