「31年間…暴力も声も荒げることなかった」被告母の思い 本当に犯人?姉からの3通の手紙【記者が傍聴した裁判(2)】広島・佐伯区“遺体バラバラ”殺人事件

広島

◆2月26日
ボードで隠された証言台に立ったのは、被告の母。
実の母を前にしても被告の表情が変わらなかったことが印象的だった。


「息子に会いたかった。こんなに会えなかったのは初めてなので緊張しているが会いたかった 」
「あの日以来、話ができていない。会えていない。会話をしっかりしたい再犯防止の講習も受けさせたい」

その後被告についての家族の供述調書が明らかになった。


◆家族の思い「見捨てない」


疲れて被告に当たってしまったことあるが、「ごめん」と謝るような子で、
問い詰められるとうつむいてパニックになる。 自転車や自動車には乗れない。
物に当たることもなく暴力とかで発散するようなタイプではない。
31年間息子を見てきて、暴力をふるうことも声を荒げることもなかった。
争いをさける温厚な性格だった。

~2023年9月30日:被告と家族との会話~
当初、被告は「2人組の知らない男たちが来て金属バットで●さんを殴れといわれた」など、2人組の犯行について家族に話した。
それを聞いた母と姉は、そんな偶然はあるのかと被告を問い詰めた。


「本当のこと言いんちゃいよ。本当のこと言わないと大変なことになるよ。嘘はバレる。
何があっても見捨てたりしない」

LINE電話で話を聞いていた姉。

「2人組の男おったん?」「正直に話しんちゃいよ。家族なんじゃけ。見捨てない」

被告
「俺のこと嫌いにならん?」「見捨てんとって」
   

「都合よく2人が来て●さんを殺害することありえるん?
2人組の男はおらんかったんじゃないん?」

被告
「じゃあ俺がやった」
「母さんや叔父のことを悪く言われた」「本当にごめん。迷惑かけてごめん」   

打ち明けた時、被告はうつむいて涙ぐんでいた。

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一転して、自分1人の犯行だったと、家族に打ち明けたという。

◆姉の思い 本当に単独犯?

被告の単独犯だと聞いた姉は、被告が1人でやったことを疑問に思うようになった。
・車の運転をしたことがない被告がどうやって運転した?
・料理もしないのに包丁は使えるの?
・1人で成人男性を運ぶのは難しいのでは?

その後、姉は3通の手紙を被告に送った。

=1通目:2023年10月12日=========================
どうしても伝えたい。●●絶対やってないよね?1人では不可能だとみんな言ってます。●●はやってない。信じています。
●●が小学生のころ「 ●●を守る」と机の中に紙が入っていたみたい。
バイト先でいじめられた時もパパとバイト先へ行った。●●も信じて。脅されたとしても絶対守ってあげる。大切なたった1人の弟だからこそ、怖くて辛くてどうしようもなかったよね。気づいてあげれんでごめんよ。
心のどこかでは本当はやってないけどと思っているはず。少しずつでいいから言葉にしてほしい。 大丈夫じゃけ。絶対大丈夫。
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=2通目:10月13日=============================
よく頑張ったよ。話してくれてありがとう。
本格的に動くことができる。本当のことをいうことに意味があるんよ。
●●が言った男を探すために。 ゆっくり丁寧で大丈夫。その質問はすべて●●を守るため。弁護士も家族も●を守るために動いている
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=3通目:10月15日=============================
みんなすごい困っとる。すべて仕事なくなったよ。
夫も仕事なくなって、娘は保育園いけれんくなって大変な生活している。
1から10まで真実話さないと。今はもう小さなうそもだれかを守るうそも意味ない。
本当のことを言った方が家族を守るためにも真実だけ話そうや
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この3通の手紙をめぐり検察側・弁護側のとらえ方は真っ向から分かれた。

検察側が指摘したとおり“姉家族への悪影響”を手紙で知った被告が「自分1人の犯行」だと、これ以上言えなくなったのか…

それとも弁護側が主張する通り、姉の手紙によって「家族は自分のことを信じてくれている」「見捨てたりされない」と思えたからこそ本当のことを話す決意ができたのか…

*傍聴した記者の取材に基づいています。