◆2月27日
法廷には精神科医が証言の場に立った。
広大医学部卒業。これまで事件に関わったとされる人物に100件以上の精神状態の診断してきた実績あり。
そして、被告を2023年11月3日から3カ月かけて診断・合計14回面接。
◆被告の行動原理
行動を考える基準は「家族への愛情」 だと精神科医は話した。
被告の「良い悪いの基準」になるのが家族だった。
母、祖母、姉、叔父への愛情が深いことから、行動原理は家族のため、
そして家族がどう思うかが一番大きな要因だと説明した。
◆変遷した被告の供述
ここで被告の供述、その変遷について整理する。
①供述: 「2人組の男たち主導による犯行」
(2023年9月29日 警察からの任意の事情聴取)
②供述: 検察が主張している自白調書
「被害者を死亡させ、遺体を損壊・遺棄したのは自分である」
(2023年9月30日~10月2日にかけての警察・検察での取り調べ)
③供述: 弁護側はこの供述を軸に主張している
「殺人と遺体の損壊は黒いジャンパーの男による犯行」
(10月12日以降の取り調べなどの供述)
続いて行われた被告人質問。
◆被告人質問(弁護側)
・●さんについて、母や叔父のことを悪く言われたり、被告自身も「学歴がないこと」などをたびたび言われていてあまり良い印象は持っていなかったこと
・事件当日、●さんに家族や猫を馬鹿にされ、カッとなって、石のようなもので2回頭をたたいてしまい動揺して外に逃げたこと
・家に戻ったところ知らない黒ずくめの40代くらいの男がコンクリートブロックで
仰向で倒れている●さんに跨り、撲殺していたこと
・助けてと命乞いをしたら「手伝え」と言われ、遺体を運んだり、掃除をしたり、遺体の遺棄を手伝ってしまったこと…
など、●さんの印象や事件当時の状況を、弁護士の質問に沿って淡々と話していった。
◆注目したのは変遷した供述についてー
①供述: 「2人組の男たち主導による犯行」
(2023年9月29日 警察からの任意の事情聴取)
取り調べの独特な空気に頭が真っ白でパニックになったという被告。
「知らない2人組の男が金属バッドで●さんを殺した」
「自分も金属バッドを持って殺すように言われた」
「●さんの顔面辺りを金属バッドで叩いた」と全く真実ではないことを話してしまった。
言いたいことが言葉にできず、話が進んでしまい途中で撤回ができなかったと
虚偽の供述をした理由を話した。
②供述: 検察が主張している自白調書
「被害者を死亡させ、遺体を損壊・遺棄したのは自分である」
(2023年9月30日~10月2日にかけての警察・検察での取り調べ)
家族に「じゃあ俺がやった」と言ったのは
自分の犯行ではないことを家族が信じてくれるか試したかった。
しかし、母や姉は自分の犯行だということを全面的に受け入れている様子で
家族に信じてもらえないと思って絶望し、家族が信じている供述を話すしかないと思い、
警察と検察にも真実ではない「自分1人の犯行」だと話したという。
③供述: 弁護側はこの供述を軸に主張している
「殺人と遺体の損壊は黒いジャンパーの男による犯行」
(10月12日以降の取り調べなどの供述)
姉の手紙を読んだことで、殺害・解体をしていないと、自分のことを信じてくれていることが分かって
本当のことを話そうと思い、現在の供述に至る。
●さんに対し、遺棄したことについての反省の弁を述べ、
また自身の家族に対しても「もっと早く相談しておけばよかった」と後悔の念を話した。
◆被告人質問(検察側)
検察側からの質問。
内容によって被告は、回答がつまったり、聞き返したりする場面が多々見られたように感じた
・被告人が語る犯人像
40歳くらいの黒ずくめで知らない男性。中肉中背で身長は被告より5㎝ほど低かった。つばのある帽子をかぶって、マスクをしていた。凶器は現地調達で、“犯人”は自転車で現場を後にした。
・なぜ犯人は被告を見逃したのか
推測ですが、自分は犯人の目元しか見えておらず、顔もはっきりと見たわけでは
なかったからだと思う
・なぜ家族に本当のことを言わなかった
「あなたがやったわけではない」と言ってもらえると思っていった
自分が家族にどれだけ思われているか知りたかったから。
この日の裁判で裁判官らに被告が伝えた最後の言葉
「殺してないし解体もしていません。していないことで裁かれたくない」
*傍聴した記者の取材に基づいています。