◆2月28日
法廷には殺害された●さんの息子の姿が…
意見陳述が行われた。
「父は本当に明るく優しい人」
「もう二度と父に会うことができません。育ててもらった恩も返すことができません。」
「反省の態度も見られなかった。できるだけ長く刑に服してほしい」
「命をもって償ってもらいたい」
父を失った息子の被告に対する言葉には、非常に強い処罰感情を感じた。
被害者の息子の言葉を黙って聞いていた被告の様子に変化は見られなかった。
◆3月4日
検察側は、●さんを殺害し、その遺体を解体・遺棄したのは被告1人の犯行であるとして
懲役20年を求刑した。
検察官
「顔面の陥没骨折など遺体は激しく損傷していて、まさにざん殺」
「人命軽視の意思決定は厳しい非難に値する」
「殺人と遺体の解体については謝罪も反省もない」と強い言葉だった。
~論告(検察側)内容~
裁判員がどちらの主張を信じるべきか、判断しにくい点を丁寧に説明していた。
〇二転三転した供述の中で「単独犯を認めた供述」の信用性が高いといえること
~被告2023年10月1日供述~
・犯行場所:被害者血液が検出
→整合性あり
・犯行態様:顔面の激しい損傷/頸椎の骨折状況など
→法医学者見解 整合性あり
・死亡時期:極めて短時間で死亡したと考えられる
→法医学者見解 整合性あり
・解体状況:関節にそった解体は1人で2時間あれば可能
→法医学者見解 整合性あり
・解体時に胸を刺した供述:遺体の心臓の刺し傷は死後に形成された
→法医学者見解 整合性あり
・被害者の車を移動させた供述:車両エンジンの起動時刻
→整合性あり
・被告が単独犯だと認めた供述を始めた経緯が、行動原理である「家族への愛情」に合致し、自然であること
単独犯だと認めた理由:
「家族に見捨てられると思って、最初は言えなかった その後家族が自分を見捨てないとわかったから認めた」
一方の弁護側は、
被告は殺人と解体はしておらず、遺棄も、犯人の男に脅されて行ったことだとして
執行猶予付き懲役3年程度の刑が適切だと主張した。
また裁判員に対して、残忍な殺人事件を起こした犯人像に被告は全く合致しないと説明していた。
・被告はこれまでの人生で暴力を振るったり、声を荒げたりするようなことはせず、争いを避けるような優しい性格であること
・日常的に悪口を言われ、●さんのことは嫌いだったが、被告にとって●さんは「敬愛する祖母の交際相手」であり、殺害する動機や強い意志があるとは言えない
・人を解体したこともなく運動も苦手な被告が2時間程度で人を解体するとは考えづらい
・自動車の運転免許も持っておらず自転車も乗らない被告が、被害者の自動車を運転するとは考えづらい
被告は表情を変えることなく、静かに検察側を見つめていた。
*傍聴した記者の取材に基づいています。