「今回に限り…」計画的な犯行と指摘も執行猶予付き判決 そのワケは【記者が傍聴した裁判(2)】広島・竹原市ウサギ“虐待”事件

広島

4月14日 広島地裁呉支部

午後1時半
法廷の外では開始30分前にもすでに10人近くの人が並んでいた。
全国でも注目を集めたこの事件。注目の高さがうかがえた。


◆注目を集めたワケ…これまでの裁判


事件は広島県竹原市の大久野島いわゆる“ウサギの島”で起きた。
元会社員の被告は2024年9月末ごろに休職し、その間ウサギの動画を見て興味を抱くようになった。
動画の中にウサギが悲鳴を上げているものや解体される場面があり
「実際にこの時のウサギの反応を見たい」と思うようになったという。
1月9日と21日、竹原市大久野島を訪れ、
愛護動物であるウサギ7羽に対して足を折る、頭を踏みつける、口の中にハサミを入れるなどの暴行を加え、
虐待を行い、みだりに傷つけたり死なせた罪に問われた。

動物の愛護及び管理に関する法律違反 
同法44条1項、同法44条2項

これまでの裁判では、
検察側は「身勝手かつ短絡的な動機である」と懲役1年を求刑。
一方弁護側は、「職や住居を失うなど相当の社会的な制裁を受けている」と情状酌量を求めていた。


◆裁判所の判断 判決は…


午後2時
被告の男が法廷に姿を現した。
被告は、上下緑の服に、これまでと同様、坊主姿にマスク。
入ってすぐ証言台に移動した。

島﨑航裁判官「被告人を懲役1年に処する。この裁判が確定した日から3年その刑の全部の執行を猶予する。」

判決を言い渡された時、被告は証言台の前に真っすぐ立ち、動じることなく聞いていた。

判決によると、
被告がウサギに加えた暴行は、生命や身体を害する危険が高く、様態は悪質。
動物愛護の精神に反するものであるとした。

さらに裁判官は次のように指摘した。
「ウサギを虐待したときの反応を見たい」という犯行の動機に酌量の余地がない。
わずか1カ月の間にわざわざ遠方から2回にわたり島へ行き、連続して犯行に及んでることから常習性が認められ、
犯行が強固な犯意に基づく計画的な犯行であることも指摘できる。
被告が精神的に不安定であったことが認められることを踏まえてもなお
「強い非難」に値する…


◆判決は執行猶予付き ワケは

被告は当初から一貫して事実を認め、反省の弁を述べていること
実父が今後の被告の監督を誓約する、
前科や前歴がなく自業自得とはいえ実名も含め広く報道され勤務先を退職せざるを得なくなったりするなど一定の社会的制裁を受けていることなど
酌むべき事情も認められる。
被告には「今回に限り」その刑の全部の執行を猶予し社会内で更生する機会を与えるのが相当であるとした。


◆裁判官から最後に

島﨑裁判官は、被告が犯した犯行に対して「重く悪質な事件だ」と話した。
その上で「今回のような悪質な犯行をしたいという気持ちを持ったら、周りに相談して行動しないように気を付けて生活してもらいたい」
「執行猶予である3年間、気を引き締めて生活してください」と語りかけた。

裁判官は執行猶予の意味を説明し、「今回に限り」と被告に社会で更生するチャンスを与えた。

被告は島﨑裁判官の話をしっかり聞き、黙ってうなずいていた。
傍聴人もメモをするなど関心を持って聞いていた印象だ。

弁護人によると、控訴はしないという。


※傍聴した記者の取材に基づいています。