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Home > ESSAY > 第17話 「少年の夢 ~前編~」
「あなたの夢は何ですか?」
こんなありふれた質問でも、少年や少女はその瞳を輝かせながら生き生きと答える。
少年は言う。 「サッカー選手になってワールドカップに出たい。」
少女は言う。 「ケーキ屋さんになってお菓子の家を作りたい。」
子供の夢は無限だ。
しかし、最近の傾向を見ると、その夢は「職業」に直結し、どこか大人びた印象がある。
なぜ、「夢の向こう」を見ようとしないのか?
僕が少年だった頃、「あなたの夢はなんですか?」という質問には、小さな胸を張って、こう答えた。
「空を飛びたい!」
「夢は願い続ければ叶うものだ」と、成功した者は、そのヒーローインタビューで必ず答える。
青二才の僕はまだ、その舞台に登ったことは無い。
しかし、そんな経験が無くとも、僕は、ちょっと逞しくなった胸を張って、年の夢を叶えたあの瞬間を語ることができる。
5年前の夏。 タンザニアの青空で、僕は空を飛んだんだ...
それは、突然の指令だった。
師と仰ぐ天才ディレクターから、アフリカへの同行取材を指名されたのだ。
企画の内容は、今でも諳んじて言うことが出来る。
「ハシビロコウを動かしてみよう!」
企画内容を全く理解できないADの僕は、破傷風、狂犬病、B型肝炎などの予防接種をタップリ打ち込まれ、パスポートにイエローカードを添付され、気付けば、シャルル・ド・ゴール空港を経由し、ダニエス・サ・ラーム国際空港に降り立っていた。
初めて踏む、大陸の地。
これが、46億年の進化を育んできた空気なのか?
僕のDNAが疼く。
日本を出発して28時間が経過しているのにも関わらず、我々、取材班は、四輪駆動のジープをチャーターし、マサイ族が生息する北限をひた走り、セレンゲティー国立公園を走り抜けた。
目的はただひとつ、「ハシビロコウを動かす」こと。
ハシビロコウは、動物界・脊椎動物門・鳥綱・コウノトリ目・ハシビロコウ科に属する。
つまり、「鳥」だ。
日本で見る鳥たちと、ちょっと違うのは、「動かないこと」が、その特徴となっている点のみ。
それを「動かす」というのが今回の企画らしい。
やっと企画内容が理解できた時、僕の視界には、「ダーウィンの箱庭」として知られるヴィクトリア湖がその姿を現した。
湖面には、多種多様の鳥たちが群れを成し、その翼を休めている。
ハシビロコウは、どいつだ?
僕の右目は狩猟民族のそれになり、僕の左目は探険家のそれになった。