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Home > ESSAY > 第18話 「少年の夢 ~中編~」
ハシビロコウ。
その鳥は、ビクトリア湖の湖畔、やや沼地と化した浅瀬に悠然と佇んでいた。
遠くから見ても、その身体の輪郭をハッキリ確認できる。
なぜなら、ハシビロコウの体調は2メートルを越えているからだ。
「君は2メートルもの鳥を見たことがあるか?」
日本国民の99%が首を振るその問いは、意味をなさない。
そして、テレビ業界ではディレクターからの指令に首を振ることは、意味をなさない。
「これを頭に付けて、ハシビロコウに接近しろ!」
手渡されたのは、ナマズの模型が備え付けられたヘルメット。
僕は、生唾を一つ飲み、頭にそれを装着した。
どうやら大好物であるナマズを餌にハシビロコウを動かしたいらしい。
人の命よりも面白い映像を撮りたいのがディレクターの心情。
僕は、意を決し、巨大なくちばしを持つ2メートルの鳥に近づいて行った。
鳥に食べられて死んだら、殉職扱いになるのだろうか?
天国で松田優作に会ったら質問してみよう、などとブツブツ考えながら、僕は沼地を進む。
どれくらい進んだだろう?
湖面から、すっと見上げてみると、そこにはハシビロコウがそびえ立っていた。
鳥と人間。運命の視線が交錯する。
ふと、息を飲んだ瞬間、僕の頭に付いてあるナマズがそれっぽく動いた。
そして、連動するかの如く、ハシビロコウが動いた。
動いた? いや?? 喰われる!?
僕は眼を閉じ、アルマジロのように防御の姿勢をとった。