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Home > ESSAY > 第44話 「エジソンのテスト」
幼い頃、夏休みの宿題で、一番好きだったのが、「読書感想文」だった。
なぜなら、図書館にある「世界の偉人伝シリーズ」を、片っ端から読みあさっていた僕には、たくさんの憧れのヒーローたちが、頭の中に存在していたのだから。
天才的の英雄「ナポレオン」。荒ぶる魂の侍「織田信長」。不屈の冒険王「コロンブス」。
空に愛された「ライト兄弟」。運命の音楽家「ベートーベン」。奇跡の人「ヘレン・ケラー」。
そして、自分自身が憧れるヒーローのことを、自由に書くことができるこの「読書感想文」に、最も頻繁に登場していた人物がいる。
「トーマス・エジソン」。
「世界の発明王」と呼ばれる「エジソン」は、白熱電球・アルカリ電池・映画・蓄音機などなど、数にして1,300もの「発明」をし、世の中に、「便利」という概念を持ち込み、巨万の富を得る。
しかも、エジソンは、1929年の世界大恐慌が起こった際に、「若者の才能を守らなければならない」と意気込み、「エジソン奨学金基金」を設立したのだ。
そして、その奨学金を受け取る人材を選ぶために課された試験問題が、「エジソンのテスト」だ。
「エジソンのテスト」
問1:「人生を振り返る時、何をもって自分の人生が成功か失敗かを判断しますか?」
問2:「幸福、名誉、富、愛情の中で、あなたが人生を掛けたいと思うのは何ですか?」
問3:「どういう場合に、嘘をついても良いと思いますか?」
幼い頃の僕は、「エジソンのテスト」に対する答えを、「読書感想文」に自由に書き記していく。
「人生の成功とは、長生きであり、欲しいものは全部手に入れ、必要とあらば、いつだって嘘は付いたって構わない。」、と。
そんな無邪気な解答に対して、担任の先生は、全く採点をしなかった。
あれから、長い長い時間が流れ、現在の僕は、エジソンが「発電機」を発明した年齢と同じになってしまったが、自由に書き記すことは忘れていない。
ある哲学者は言いました。
「発明とは、誰でも見たことがあるものを見て、誰も考えなかったことを思い付くこと」、と。
もしかしたら、「エジソンのテスト」に、「正解」を見出そうとするのならば、僕たちは、「人生」という誰でも見たことがあるものを見て、誰も考えなかった「物語」を思い付かなければならないのではないのだろうか。
「物語の発明」
もしかしたら、人生の成功とは、他人に語れる物語の有無であり、その喜怒哀楽に満ちた物語を作るために人生を掛け、そして、人を喜ばせる嘘ならば、たまには、嘘を付いても良いのではないだろうか。
トーマス・エジソンは言いました。
「才能とは、1%のヒラメキと99%の汗である」、と。
もし、僕に「才能」があるのならば、それは、「書き続ける汗」なのかもしれない。
もし、僕に「才能」があるのならば、それは、「伝え続ける努力」なのかもしれない。
そして僕が、この壮大な「人生の感想文」を描き続けるためには、「彼女」というヒラメキの存在が必要なのである。
長い長い時間が流れた後、果たして彼女は、どんな採点をしてくれるのだろうか?
できれば、「100点満点」よりも、彼女にとっての「ヒーロー」でありたい。