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Home > ESSAY > 第36話 「時間論 ~運命非存在的証明~ ②」
フランスの社会学者ボードリアールはその著書「宿命の戦略」の中でこんな言葉を残している。
神は言った。 「偶然は私をくたくたにする」
全知全能の神であっても、翻弄されてしまう「運命」という大きな力。
そんな強烈な力が僕という小さな人間に降りかかれば、もう、太刀打ちなどできない。
なぜならば、出会った時には、僕はすっかり運命の人に魅了されているからだ。
圧倒的な存在感を示す運命の人。
出会った時から続く永遠の時。
「存在と時間」を書いたドイツの哲学者ハイデガーは、「存在」と「時間」の挟間で、こんな考えを示している。
運命の人との出会いをきっかけに、これからもこの人と共に生きていこうと、輝く未来を創造してしまう。
それと同時に、過去が再構築され、この出会いこそが、これまでの生きてきた必然的到達点であると感じる。
つまり、運命の人に出会ったという「現在」の一瞬は、今までの「過去」があったからこそ生まれたもので、しかも、これからの「未来」はきっと素晴らしいものに違いないと、思ってしまう。
この本能的解釈こそが「運命」なのだ、と。
新しく意味付けされる「過去」。
輝くものだと信じられる「未来」。
その人に出会ったというだけで、強烈な時間軸の歪みを起こさせるのが「運命」なのだ。
これって、悔しくない?
自分の人生を歪められちゃうんだよ。
しかも、自分自身に・・・
僕には、大好きなフレーズがある。
この言葉に、僕は幾度も救われ、そして、いつからか、この言葉を武器に人生を歩んでいる。
それは、、、
「時間は全ての人に平等である」
自分自身が歩んできた「過去」を都合の良いように解釈し直し、また、自分自身のこれから歩む「未来」を努力もせずに輝くものと信じるというような安直な本能的思考と、僕は闘う。
そう、僕は「運命」と闘う意思を持っている人間なのだ。
つづく