番組は2015年3月をもって終了しました。8年間応援ありがとうございました!
新番組「よなよなテレビ」をどうぞよろしくお願いいたします。
ある哲学者は言いました。
「人生とは旅のようなものであり、旅とは人生のようなものである。」、と。
僕は、もう一度、バックパックから荷物を広げ、忘れ物が無いかどうかを確認する。
大好きな本が3冊、愛用のライカ、そして、スタンプいっぱいのパスポート。
そして、まだ寝ている彼女の耳元で、そっとつぶやき、僕は旅に出る。
「行ってきます」
僕たちは、なぜ旅に出るのか?
僕たちの人生には、いくつもの節目があり、そこには「時代」が存在する。
そして、旅にもいくつか「種類」があり、僕はその旅のどれかを未だに続けている。
哲学界の巨人であるニーチェは、人生という旅を「3つの時代」に分割した。
暗さと輝きが交錯する「ラクダの時代」。
恍惚と不安の狭間を行き来する「獅子の時代」。
そして、全てから解放される「胎児の時代」。
人は、「変化」をしながら、その時代を生き、自分だけの「地図」を描く。
旅の途中、僕は、ニーチェの哲学をヒントに、旅の種類について考えてみた。
行き先の情報を集め、空想を広げる「未来の旅」。
地図を片手に見聞を広め、異文化との出会いを楽しむ「現在の旅」。
そして、現像された写真を手に、旅の思い出に浸る「過去の旅」。
人は、「時間の逆行」を体験することで、「幸せ」を享受しているに過ぎないのかもしれない。
「未来」を願い、「今」を生き、「過去」を懐かしむ。
こんな単純な構図こそが、旅の本質であり、そこにこそ、僕が旅に出る理由が存在するのだ。
「ただいま」
そんな僕は、行き当たりばったりを繰り返しながら、彼女の家にたどり着く。
ドアを開け、大きな声を出してみるものの彼女はいない。
僕はひとり、バックパックから荷物を取り出し、旅の後片付けをする。
書き込んだノートが3冊、モノクロ用のフィルム、そして、スタンプが増えたパスポート。
すると、前触れもなくドアが開き、二人の声が重なる。
「おかえり」
いくつもの時代が存在する人生。様々な種類が存在する旅。
そんな複雑に入り組んだ世界で、二人が交錯する「点」は、どんな地図にも描かれていない。
「行ってきます。」と「行ってらっしゃい。」
「ただいま。」と「おかえり。」
この二つの言葉が重なり合う「点」こそが、僕たちがこの旅で見つけなければならない「奇跡」なのだから。
「たまには、ふたりで旅をしようよ」
と、いつも僕より先に寝てしまう彼女の耳元でそっとつぶやいた。
「カリブ海に素敵な島を見つけたんだ・・・」